十九話:因縁と日常
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…………そんなことはない」
「じゃあ、そのやたら長い間はなんですか!」
気まずげに目を逸らす俺にエルスのツッコミが再び炸裂する。
だが、時は金なりだ。時間が惜しいので足早にジークとエルスと共に入場する。
別に逃げているわけではない。ジークもエルスに気まずげな視線を送っているが関係の無い事だろう。
「ジーク……無事に、生きて帰ってきて!」
「心配してくれるのは嬉しいけど私もいくらなんでも大げさやと思うよ、ヴィクター」
「これが反抗期とでもいうのかしら…!」
最後にこんなくだらない会話があったような気がするがきっと俺の気のせいだろう。
「お兄ちゃんは何があっても渡せません!」
「ポッとでの小娘がしゃしゃり出てくるんやないよッ!」
「この拳で守るべきものを守りきる! それが覇王の意志です!」
「全てを刈り取るエレミア舐めんでーや!」
何やらおかしな雄叫びを上げながら拳と拳をぶつけ合わすジークとアインハルトちゃん。
話している内容が観客席にまでは届いていないのが不幸中の幸いだろう。
表面上はお互いの全てをかけている熱い戦いだが内面はなんともアホらしいものだ。
向こうのセコンドであるノーヴェさんのように呆れた顔するのが普通だろう。
……俺が争いの原因になっていることがなければ。
「すまない、エルス。トイレに行ってくるから後は頼んだ」
「逃げようとしたってそうはいきませんよ」
「後生だから逃がしてくれ! この戦いが終わった後が怖すぎる!」
「自業自得です」
冷たい声で宣言しながら逃げられないように俺を手錠で拘束するエルス。
どっちが勝っても俺に不幸な展開が訪れそうな空気が嫌すぎる。
というか、アインハルトちゃんはいつの間にブラコンになっていたんだ。
慕ってくれるのは嬉しいがいくらなんでも拗らせ過ぎだろう。
「ルーキーが私に勝とうなんて百年早いんよ!」
「……一度も抱きしめられたことがないくせに」
「全力のエレミア相手にして五体満足で帰れると思うなやーッ!」
投げ技に絞め技さらには鉄腕による拳での破壊。
どこか勝ち誇ったような声で告げられた事実にジークが激昂して繰り出し続ける。
……試合に勝って勝負に負けるとはこういう事を言うのだろうか?
それにしてもジークの奴えげつないな。まあ、試合だから仕方ないけど。
後、アインハルトちゃんも回復が凄いな。あれはティオの能力か。便利な力だな。
「くッ! 流石です。ですが食費ぐらいはご自身で稼いだらどうですか?」
「な、何で知っとるんや!」
「当然です。あなたよりお兄ちゃんに近しい存在ですから」
「私の方が近しいわ! そんなら君は一緒に寝たこと
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