繰り返される時の中で
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と毎日学校に通って、いじめられてもめげずに利英と頑張っているのだろう。
幸せなほんのわずかな瞬間でさえも、絶望しかない、死の未来しか待っていないというのに、そんなわずかな瞬間でさえも雪菜は受け入れるといった。
だとしたら、今という瞬間がどれほどつらいのだろうか。
俺には想像がつかない。
俺はどうだ?
逃げてばかりだ。
結局喧嘩した央山とはそのままだ。
京ともつきあったとはいえ、成り行きでそうなったから・・・というだけだ。
別に会いたいとさえも思わない。
いればいるでいいし、いなければいないでいい。
そんな感じだ。
何もかもが消極的で逃げ続けている。
それが今の俺だ。
「うぅ・・・くっ・・・クソッ!クソッ!!」
近くの電柱に拳をぶつけ、八つ当たりをする。
ハハハ・・・痛みさえも感じはしねえ。
それが今の俺かよ・・・。
「なんで・・・なんで・・・こうなるんだよ・・・。俺はただ・・・ただみんなが幸せになるように・・・!あんな未来が来ないようにと思ったから!!」
俺はその場に崩れ落ちる。
昨日まで・・・いや、つい先ほどまで俺は『ここが幸せな場所なんだ』と思い込んでいた。
違う。
思い込もうとしていたんだ。
自分に無理やりそう思い込ませ、少しでも現実から逃げようとしていたんだ。
ここは間違いなく現実だ。
何のいたずらかは知らないが、確実に時間が遡っている。
それはあの日、あの並木道にいた瞬間に覚った。
だから逃げた。
だから雪菜を無視して先に進んだ。
「・・・ごめん」
そう思うと自然と言葉が漏れてきた。
今、雪菜は俺のことを覚えていない・・・いや、知らないといったほうが的確か。
知っていたら、俺のところに来るはずだ。
来なかったとしても、利英が話した『もしも』のことが『もしも』のことではないのだから、その時点でもう雪菜は俺のことを知らないことは確実だろう。
そう思うと涙が出てきた。
雪菜は俺のことを覚えていない。
あの幸せだった・・・ほんのわずかな、瞬きすれば過ぎてしまうようなわずかな瞬間でさえも覚えていないのだ。
ほんのわずかも覚えていない。
それがとてつもなく悲しくて、俺はついに声を上げて泣き出す。
地面に拳を当てて泣き叫ぶ。
悲しさから自分に対して罵倒の言葉を投げかける。
「馬鹿野郎!バカ野郎が!なんで・・・なんで俺はあそこで雪菜を見捨てた・・・!もっと方法はあっただろ・・・!もっと遠くに引っ越すとか・・・!京を説得するとか・・・!なのに・・・なんで!なんで俺はあんなことを・・・!!」
『上元先輩!』
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