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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
第32話:モブらはみんな生きている 一
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代未聞の大事件。

俺と同い年であるにも拘わらず、人質の無事と事件解決を成功させたウルフ殿は、誰もが天才だと認めるだろう。
生意気じゃなければ、もっとメイド等にモテただろう……
メイドの間では『生意気なガキ』として有名だ。尤も、それでも憧れているメイドが数人居るらしいが。

「……それで、俺等の知らない情報ってのは何だよ?」
マークもスカーレットも、今ある情報だけで盛り上がってるので、話を進めさせる為に俺は彼女の情報を問うてみる。

「ふっふっふっ……聞いたらアンタ等キレるわよ」
「サッサと言わなきゃお前にキレる」
勿体振るスカーレットに笑いながら催促する。

「せっかちねぇ、じゃぁ言っちゃうけど……ウルフ君てば、リュリュ様を犯人達に“フィアンセ”として紹介したみたいよ(笑)」
「な、何だとあのクソガキ!?」
何でそうなったのか判らないが、リュリュ様ファンのマークには許せない情報の様だ。

「ほらキレた」
「キレたのはマークだけだろ。俺はリュリュ様のファンじゃない……で、如何いう経緯(いきさつ)で?」
一人憤慨しているマークを尻目に、フィアンセと紹介したウルフ殿の意図を聞いてみる。

「うん。先輩がティミー殿下やアルル様から聞いた話を総合すると、ウルフ君のVIP度を上げる為……って事らしいわよ」
「何だそりゃ?」
「あのガキのVIP度なんて上げる必要ない!」

「そういう訳にもいかないんだってば。1000人もの人質を守る為には、最も効率の良い人質が1人必要だったんだって」
「効率の良い人質?」

「つまりね、リュカ様はお芝居で1000人の人質を見捨てようと演技したの。そこへリュリュ様が涙ながらにフィアンセの無事を父親に懇願すれば、ウルフ君さえ居れば人質は事足りるって犯人は思う訳よ」

「そこが解らん。何故陛下は1000人の人質を見捨てようと言い出したんだ?」
「本当に解らないのかロバート? 犯人が人質を盾に出来なくする為だよ。陛下が金を払うのを惜しんで、人質を見捨てる発言をすれば、犯人は人質を盾にしたり、危害を加えたりしなくなる」

「なるほど! でも自棄にさせない為に、ウルフ殿をVIPな人質として仕立て上げたんだな? 身を守る盾としてだけじゃなく金を払わせる貴重な道具に!」
「だからと言って何であのガキがリュリュ様の……」

リュリュ様に一方的な憧れを持つマークは、しつこくウルフ殿を罵る。
気が付くと俺等の周囲には、この話を聞きたがってる他の兵士やメイド等までもが集まり、マークの憤慨に同調する者も見当たった。

「俺の聞いた話では、陛下は犯人等にゴレムス殿とサーラ殿をMH(マジックフォン)越しに見せ付け、1000人の人質と共に犯人を皆殺しにする意思を見せ付けたらしいぞ」

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