第五話
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何も無いはずの左眼の奥が痒い……。如月流星にえぐり取られた、左眼のあった場所のさらに奥が痒くてそして痛みさえ感じる。
痒みは痛みと混在し、俺の左眼の奥の方、それはまるで脳の中から何かが這い出てこようとする得体の知れない感覚。そのは頭の真ん中から次第に外側へと動いて来る。
眼窩に何かを感じる。
瞼は閉じられたまま。血が固まり瘡蓋になっているはず。そこが猛烈に痒くなってきた。我慢しきれずにごしごしとこする。
俺は指越しに感じる。……眼球の存在を。失われ、如月流星の眼にはめ込まれたはずの眼球を。
来る……。
何かを感じた。そして明確にそれを感じる。
それは沸き立ち荒れ狂う膨大で圧倒的な力であり、だがしかし、それを遙かに上回る禁忌と恐怖を伴う「モノ」だと感じた。
理由は解らない。……それは知っているというより、覚えているという感覚なんだ。
左瞼を開けば、それは解放されるという予感があり、その予感は間違いのない事だともどういうことも知っている。
だけど、それをやっていいのか? どういうわけか俺は怖れている。具体的じゃない怖れ。なんだそれ。でも……深い深い谷底をのぞき込むような恐怖感。それが今の俺にある。その下に何があるかはわからないけど、何か良くないことが起こる予感。本能的な怖れ。
禁忌。
俺は頭を振った。
そして決心した。
俺は少女を護り、寧々の敵を討つと。そのための代償なら何でも払ってやる。
覚悟を決め、閉じた左眼の瞼を開けようとする。まだ瘡蓋が張り付いていて、きちんと開くことができない。俺は両手で無理矢理瘡蓋を剥がす。ヒリヒリと痛むが構っていられない。
そしてパンドラの箱は開かれた。
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