第五話
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「あーびっくりした……。いきなり爆発だもんなあ」とのんびりした口調。「でもなあ。こんな危ないことする子はお仕置きだよ、わかる? 」
そう言って俺たちを睨みつける。触手がグニュグニュと床を這い回る。
俺は少女の庇うように立ち、睨みつけるのがやっとだ。
頭の中ではどうやってここから逃げ出すかを必死で考えていた。
あの触手は高速で動く。俺の走るスピードでは、追尾からまず逃れられない。しかもこの少女を護りながらそれをやんなきゃならないから、結果、不可能となる。では俺が盾になって庇いながらではどうか? しかし、生身の人間の体ではあの触手を防ぐ事など不可能であることは実証済み。むろん、俺が戦ったところで勝機はゼロ。
結論。
俺が玉砕覚悟で奴に突っ込み、注意を惹く。その隙に少女は教室から逃走する。それしかないだろう。
「俺が……」
俺がその作戦を彼女に伝えようとするのを遮り、少女は俺の前へと立った。
「わたしがあいつを引きつけるから、……お前はその間に逃げなさい」
「馬鹿言ってるんじゃない。女の子を残して俺だけ逃げられるわけないじゃないか」
「お前……、ふう、本当に呆れるほどの馬鹿でしょう。お前がどうがんばったところで勝てる見込みなんか無いでしょ。そもそも、いるだけで足手まといなだけだし、結局、二人とも死ぬことになるわ」
と、至極まともな事を言う。
しかし、どうも疲労が相当なレベルに達しているんだろう、……かなり苦しそにしている。立っているのも本当は辛いんじゃないのか。
???まったく、ガキのくせに生意気だな。俺は思う。
「おちびちゃんを残して俺だけ逃げるなんてできるわけないだろ? 嬲り殺されるぜ。……一日に二人も、二人もなんだ。これ以上、俺の目の前で人を死なせない、絶対にね」
「その意気込みだけは素晴らしいけれども、結果を伴わせる能力が無ければ只の戯れ言でしかないわよ。……そもそも、わたしがこの世界に逃れてきた事がすべての原因。そのせいで一人の少年と一人の少女がすでに死んでしまった。さらにお前まで死なせてしまったら、さすがに辛いわ。自分のことは自分で片をつけなきゃいけない。それは上に立つ者として当然の事」
「今の君の状態で、勝つ見込みなんてあるのか」
「それはやってみないとわからないわ。安心しなさい。勝つ見込みがない戦いは、やらない主義だから。心配することはないわ。お前はわたしがあいつに攻撃を始めたらすぐに外へ逃げなさい。それくらいの時間は稼いであげるから」
「そんなのできるわけない。できるわけ無いじゃないか」
とはいうものの、俺にだって解決法があるわけではなかった。
俺の話を無視して彼女は背を向ける。
「3つ数えたら、始めるわよ」
その声は震えている。
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