第四話
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……でも、かつてそうだった存在、としか言えないな。
もう人間としての形態をとっていない。
尻の穴から生えた5本の奇怪な触手のうち4本を脚にして、奴は浮かび上がった状態でこちらに走り寄ってきたんだ。遠目にはアメンボか蜘蛛のようにさえ見えた。触手に支えられた彼の体はフワフワと浮かんでいるように見える。複数の足音と感じたのは奴が4足歩行をしていたからだったんだな。
そして宙に浮いたのこり1本の触手の先端は何かを貫いていた。
それは全裸の人のようだった。逃げようともがいているのか手足をバタバタさせている。まるで空を走っているようにさえ見える。激しく動いているためにハッキリと誰とかはわからない。でも妙につるつるした肌色の体だ。酷いことに顔や体の皮を一部引きはがされているようだ。どうみても皮膚とは思えない部分が右半身に集中して見える。
誰かが捕まったのか?
「くそ、助けないと」
俺は口走る。これ以上の犠牲者なんて見たくないぜ。
「こんなモンで、よくも僕をだましやがったな、このクソガキ! クソチビ! 」
如月は俺の腕に抱かれたままの少女に対して汚くののしった。両目をつり上げ、鋭い眼光で睨みつける。
「ハハン! 下等生物は騙すのが簡単だわ。実にたわいもなくひっかかったわ。本当に単細胞の馬鹿なのね」
負けじと金髪の少女が切り返す。
騙した? ……俺はなんだかわからず二人を見、そして気づいた。
なんと如月のケツ触手が貫いていたモノはよく見れば、いや普通に見ればすぐわかる。人間じゃなかった。動揺していたせいか、こんなのもわかんなくなるんだ。
……人形だ。
それも学校でよく見かけたあの人体模型だった。
違う点は頭にシルバーのティアラがのっかっているところだな。
左半身は全裸、右半身は内臓をむき出し状態のアレだ。どういうわけか模型が命を吹き込まれたように動いていて、それを如月は少女と間違えたのだ。頭に載せていたティアラの影響なのかな。……そして嬉しげに捕まえると触手の一本で少女を犯したつもりになってたんだな。
……こりゃ本当に馬鹿だ。
「クソ、クソ、クソー!! みんなでよってたかって、僕を馬鹿にしやがってぇ。こんなもんで僕をよくも騙すなんて許さない! 絶対に許さないよ、……こ、このクソガキャアッ」
ブンと音がし、人体模型を串刺しにした触手が、模型を俺たちのほうに叩き付けてきた。目測を誤ったのか俺たちの数メートル左の壁に派手な音をたてて激突し、手足があちこちに千切れ飛ぶ。
模型は体をくの字に曲がって転がった。頭と右手と左足は胴体にくっついたままだった。はずれて飛んでいったのは左手と右足だ。どっちも付け根から飛んで行ってる。
やはり学校の(この校舎ではない)理科室にあった
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