第二話
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
俺の顔の方へと動き始める。俺は視線を避けようとするが動かない。動けない。そして奴は笑った。
俺は全身の血の気が失せていくのを感じた。それは明確な恐怖だった。背後は壁で逃げることができないのになんとか後方へと逃れようと足掻く。しかし、素早く右手をがっしりと掴まれていた。
「だめだよ、月人君。ボールペンのような尖ったものを人に向けちゃあ。目なんかにささったら失明しちゃうじゃないか。そんな悪い子ちゃんにはメッ!だよ」
そう言いながら俺の右手に奴の左手が絡みつき、ぐっと握りしめた。
パキパキ。
枯れ枝が何本か折れた様な音がするのと同時に激痛が貫くのを感じた。奴の手の中で俺の右手が握りつぶされ、表皮を突き破って何本も骨が露出し、血と肉が垂れる。
「ぐがっ」
脚が引きちぎられた痛みでさえ精一杯なのに右手をグチャグチャにされた痛みが加わり、俺は再び喘いでしまう。痛みには際限がないってーのかよ、
なんだよまったく。
「泣きたいなら泣いたらいいんだよ、月人君。泣いたって誰も助けてくれないけど、その悲しみは僕が受け止めてあげるから安心して。君みたいなクールな奴でも泣き喚いちゃうところを見せておくれよ。へっ」
どうして如月が俺が泣くところをみたいかなんて考える余裕がなかった。ただただ痛い。痛み以上に思ったことがある。千切られた右足、潰された右手……。仮にこの場を助かったところでちゃんと治らないだろう事が想像できる。今まで五体満足で生きていたから考えたことも無かったけど、一体俺はどうしたらいいんだろう。絶望感が俺を襲ってくる。心が折れそうになっているんだ。思わず叫び出したくなる。「助けてくれ」と。「お願いだから解放してくれ」と。
俺は虚ろな目で如月を見返す。そしてその背後に倒れたかつての寧々が無惨な姿でうち捨てられている。彼女の無念を思うと折れそうになる心に炎が滾ってくるのが分かる。寧々が一体何をしたんだ。
こいつだけは許せない。許してはいけない。絶対にぶっ殺す……。でも、もう俺にこいつを斃すチャンスは訪れないんだろうなって確信している。選択肢は殺されるという一択しかない。こいつと俺の間にある圧倒的な力の差、それはどうしようもない。ちぇっ。なんだかわかんないけど足掻いても仕方ないから殺されてやるよ。……でもお前が望むような死に方だけはしてやらねえ。絶対、泣きわめいて助けを求めたりするもんか。
ニヤニヤと笑う如月の顔に唾を吐きかけてやった。
「くそ、くらえ、だ。ばかやろう」
全身の痛みをこらえながらなんとか言ってやった。うまく言葉にできたことで、よしっと俺は心の中でガッツポーズ。
顔面にかかった俺の唾を如月はゆっくりと右手で拭き取った。その顔からは気持ち悪いヘラヘラ嗤いが消えていた。真顔になると今まで知っ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ