第一話
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たいんだろうって思うようにしていた。
きっとそうなんだ。間違いない。うん。
夕暮れの第一校舎には人の気配は全くなかった。誰かに会ったらそいつと一緒に行くか、行くのをやめようと思っていた。しかしそんな時に限って誰にも会わないもんなんだ。
結局、俺は校舎の入口に立っていた。
こんな場所に俺と親友の恋人の二人っきり。もし誰かに見られたら誤解されるのは間違いない。何を思って日向は呼び出したんだろう。
校舎の最上階の3階の一室に彼女はいた。
夕陽に照らされた彼女はなんだかいつもより色っぽくて、そして眩しいくらい綺麗だった。
俺はどういうわけか心臓の高鳴りを感じたりして、なんだか恥ずかしくなっていた。
おもむろに潤んだ瞳で俺を見つめたと思うと、突然抱きついてきて、ふう……この状態なんだ。
もともと彼女は可愛い部類に入る子だし、性格も明るく良い子だからクラスでも結構人気がある。もし誘われたら断る理由なんてない。だからこの状況はラッキーと思うべき事なんだ。
……俺の親友の漆多の彼女だという事実を知らなければね。
しかし、キスをされながら俺は彼女を押しのけることができない。体がいうことを利かない。俺は不貞をはたらいているというのに。
親友の漆多から相談を受け、いろいろと方法を考えた日々が思い出される。
結局当たって砕けろ戦法でまさかのOKを得たんだったけど……。そのときは二人で大喜びだった。
まるで自分のことのように嬉しかった。
一緒に遊園地にデートに行った、手を繋いだ。キスをしたぞ! 漆多はそんな他人にとってはどうでもいいことを逐一俺に報告してくれた。なかよくわからないけど、俺はそんな幸せそうなあいつの顔を見ているだけで自分まで幸せな気分になっていたんだ。
「いいなあ、マジ羨ましいぜ。ずっとお前達はラブラブなんだろうな。少し腹が立つくらいだ」
親友の恋の成就を本気で喜んでいたのに、俺はどうしたんだろう。
後ろめたさを感じながら、彼女とキスをしていることにどうも背徳的な喜びさえ感じているんじゃないかって思ってしまう。
「好き好き好き、大好き、柊君。……お願い、お願いだから私を奪い去って」
と、寧々が耳元で囁く。
奪い去って……それは漆多から奪い取れということなのか?
彼女は俺の右手を手に取り、自らの胸へと誘導する。
だめだ、これはだめだ。……越えてはいけない。
本気でやばいと思った。そうはいっても彼女は魅力的すぎるし、しかも俺のことを好きなようだ。俺だって彼女の事は嫌いじゃないし……。このままだと何の障害もない。行き着くところまで行ってしまう。そして彼女の魅力の前には、それを止めるほどの意志の強さは俺にはないし、彼女もそんなつもり
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