第154話 孫堅参上
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荊州長沙郡臨湘県――
臨湘県は長沙郡太守の治所である。臨湘の城の主である孫堅は執務室の椅子に腰掛け机の上に足を乗せ酒をあおっていた。
「くぅ――生き返る!」
孫堅は酒瓶を唇から離すと歓喜の声を上げた。彼女はもう一度徳利に口をつけ豪快に喉を鳴らしながら酒をあおると右手で口元を拭った。
孫堅が酒盛りを始めて四刻(一時間)位が過ぎようとしていた。彼女の頬は酒の酔いでほんのり赤く染まり上機嫌に鼻歌を歌いだした。彼女が酒盛りに興じているのは主だった者達が城にいないからだ。孫権、甘寧は言うに及ばず南陽郡にいる。孫策は彼女の名代で山賊討伐へ、黄蓋は諸用で零陵郡に出向いていた。誰もいないことをいいことに彼女は羽目を外し秘蔵の酒に手をつけていた。
「やっぱり、美味しいね。雪蓮と祭がいたんじゃ、あっという間に空になってしまうよ」
孫堅はほくそ笑み徳利をゆっくり眺めていた。孫堅はしばし素朴な土色の徳利の表面を観賞し、再び酒を飲もうと徳利を口元に近づけた。
「文台様、一大事ですぞ!」
孫堅が酒を飲むを邪魔するように黄蓋が乱暴に扉を開け部屋に入ってきた。孫堅は慌てて徳利を自分の後ろに隠した。
「祭、どうしたんだい!?」
孫堅は慌てた様子で祭に聞く。黄蓋は部屋に漂う酒の香りに気づいたのか鼻をひくひくさせ匂いを嗅いでいた。
「この匂いは酒ですな。何とも良い匂いじゃ」
黄蓋は鼻で酒の香りを堪能する。孫堅は黄蓋の様子に顔に冷や汗をかき出していた。
「酒の話なんでどうでもいい。祭、そんなに慌ててどうしたんだい?」
孫堅は強い調子で黄蓋に言った。黄蓋は孫堅の動揺ぶりに不信感を抱いたのかジト目で孫堅のことを見た。
「私は何もやましいことはしてないぞ!」
「わしはまだ何もいっていませんぞ?」
黄蓋の指摘に孫堅は鼻歌を歌い視線を逸らした。黄蓋は孫堅の態度に嘆息した。
「酷いですな。どうせ自分だけ美味い酒を飲んでいたのでございましょう。家臣が有益な情報を手に入れ急いで戻ったかと思えば」
黄蓋は目頭を抑え泣く仕草をすると、孫堅はバツが悪そうに沈黙した。
「分かった。分かった。後で祭にも分けてやるから、さっさとその有益な情報というのを教えな」
孫堅は黄蓋にぶっきらぼうに言った。黄蓋は孫堅の言葉に笑みを浮かべた。
「文台様、蔡瑁討伐の檄文が出回っている様子です」
孫堅は一瞬で酔が冷めたか如く両目を見開いた。
「蔡瑁討伐だって!? 檄文を書いた者は誰だい?」
「わしも真偽はわかりませんが、『車騎将軍』と零陵の民が申しておりました」
「車騎将軍!? 随分大物だね。零陵郡というと、太守は韓嵩。劉表の配下か。何でまた韓嵩のところになんか」
孫堅は「車
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