第154話 孫堅参上
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老体、助かった」
老婆に声を掛けられた孫堅は笑顔で振り向いた。老婆は貧しい身なりではあったが善人そうな雰囲気を放っていた。孫堅も彼女の雰囲気に安心して表情が自然と優しい表情になっていた。
「いや〜。皆、私達を不審がって答えてくれなくてな」
「そんな物騒な連中を連れていたら、ここらの者は不信がるだろうさ」
老婆は孫堅にぶっきらぼうにに言った。孫堅は兵士達に視線を向けると老婆に苦笑いを浮かべた。
「脅すつもりはなかったのだがな」
「別にいいさ。海陵酒家を探しているんだろ?」
老婆は孫堅の弁明などどうでもいいという態度で本題を切り出してきた。
「ご老体、『海陵酒家』を知っているのか?」
「知っているも何も。もう店を閉めてしまったけどな。何でも車騎将軍の直臣に取り立てられたらしくてな。この前会ったら身なりもしっかりして、立派になったもんだよ」
老婆は呂岱が士官したことを我が事のように喜んでいる様子だった。その話を聞いた孫堅と孫策と黄蓋は顔を見合わせ驚いていた。
「『海陵酒家』の店主は車騎将軍に士官したのか!?」
「そうだよ」
老婆は淡々と言った。
「『海陵酒家』で女が二人出入りしていなかったか? 名は孫仲謀と甘興覇というのだが」
二人の名を聞き、老婆は孫堅のことを面食らったように見つめた。
「あんた。貴方様は孫文台様ですか?」
老婆は突然に孫堅に対する口調を敬語に変えた。彼女は孫堅のことを怯えた表情で見ていた。
「ご老体、落ち着いてくれ。私は何もしないさ」
孫堅は怯える老婆に近づき落ち着かせようとしたが、老婆は後ずさりした。傍目から見ると老婆を脅す悪徳兵士達の構図だった。
「落ち着いて。おばあちゃん。母上は怖そうだけど怖くないから」
孫堅を怖がる老婆の警戒を解こう孫策が笑顔で老婆に近づいた。孫堅は孫策の言葉に眉を上げ苛ついた表情を浮かべる。それに老婆は反応した。
「ひぃぃ。近づかないでおくれ!」
老婆は孫堅達のことを恐れ更に後ずさった。孫堅達は困り果てていたが、孫権のことを知っているかもしれない老婆を逃がす訳にもいかず詰め寄った。
「そこで何をしている!」
孫堅達を怒鳴る男の声が聞こえた。彼女達が振り向くと老婆は急いで声の方に逃げていった。声の主は正宗だった。彼は老婆を後ろに隠し、孫堅達を不審感に満ちた目で見ていた。彼は士大夫が一般的に着ている服装だったが、その服装とは似合わない豪壮な双天戟を右肩で支えるように軽々と持っていた。
「劉将軍!? こ、こいつらが私を脅したんです!」
老婆は動揺した様子で正宗に訴えかけた。正宗の孫堅達を見る目が冷徹なものに代わった。それだけで辺りの温度が一段下がる感じがし
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