第154話 孫堅参上
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正宗は再度甘寧のことを聞いた。
「家臣甘興覇は車騎将軍の文を届けるために昼夜休みなく長沙郡にたどり着きました。精も根も尽き果て、現在は長沙郡にて少し休みをとり兵を引き連れ遅れて南陽郡に到着する段取りとなっております」
孫堅は正宗に聞かれしばし沈黙を保ったが、徐ろに口を開き淀みなく正宗に説明した。孫権は彼女の説明に安堵している様子だった。甘寧が蔡瑁の手の者に拘束されたと考えたのか。それともうまい具合に取り繕うことができたと考えたのか。
「そうか。甘興覇の働き殊勝だ。あの者へは少し辛くあたってしまったが実直な者のようだ。次に会ったら褒美をやることにしよう」
正宗は孫堅の説明を聞き、孫堅へ訝しむ表情を解いた。しかし、正宗は孫堅に観察すような視線を送っていた。
「清河王のお言葉。思春が聞けば喜ぶと思います」
孫権は正宗の言葉に素直に感激している様子だった。孫権と甘寧に対する正宗の接し方は少し刺のある感じだっただけに、正宗の変化は孫権には新鮮に感じられたのだろう。
「私は帰る。泉、紫苑帰るぞ。孫仲謀、そなたは積もる話があるだろう。孫文台の世話をしてやるといい」
正宗は孫権と孫堅を交互に視線を向けると立ち去ちさろうとした。正宗は黄忠のことを真名で呼んでいた。黄忠もここに駆けつけた時に正宗のことを真名で呼んでいた。既に互いに真名を交換したのだろう。
「正宗様、この無礼な女を放置されるのですか!?」
泉は黄蓋を指さす。指された黄蓋は気まずい表情をしていた。黄蓋は自分が正宗に矢を放とうしたことを糾弾されると思っているようだ。
「もういい。興が冷めた。そなた次は首が飛ぶことになるぞ」
正宗は黄蓋を一瞥すると去っていった。泉は正宗が黄蓋に忠告をしたことで一応納得したのか、黄蓋を睨みつけて去っていった。
紫苑は孫堅と孫策と黄蓋に目礼を一度すると正宗と泉の後を追うように去っていった。
「ねえ。あれって黄忠じゃない」
「そうじゃな」
「黄忠とあのお、いや車騎将軍のやり取りを見ていると黄忠は車騎将軍の家臣になったのかしら?」
「詳しくはわかりませんがそう見えましたな」
孫策と黄蓋は正宗達が去っていた先を見つめながら言葉を交わしていた。
「お前達! 何をボサッとしているんだい。手を貸してくれ」
孫権に支えながら孫堅がゆっくりと歩いてきた。孫堅の足取りは力がなかった。正宗に受けた傷が堪えているのだろう。
「母上! 大丈夫!」
孫策は慌てて孫堅に駆け寄った。
「遅いよ」
孫堅は非難めいた視線を孫策に向けた。
「ご無事で何よりです」
黄蓋は悪気がなかったが孫堅は皮肉に聞こえたのかふてくされてた表情になった。
「母上、本
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