各々の獲得
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すればいいではないか。おっと本音が出てしまったで御座る。
普通に男らしい癖にやはり土壇場ではヘタレなので御座ろうか。
いや、他人の事は言えないが。
「で、お前はどうなんだよ? 点蔵」
「あ、Ju,Jud.まぁ、そこら辺は一応考えているで御座るよ?」
さよか、とシュウ殿はそれだけ聞いて、そのままんじゃ、と踵を返した。
は? と余りにもあっさりし過ぎてこちらが面食らう。
普通ここは自分のその考えを聞いた後、アウトかセーフかを判断する所ではないだろうか。
そのセオリーを無視して彼は普通にそのままどこかに去ろうとする。
足取りにわざとらしさは欠片もない。
本気で去っていくつもりだ。
「シュ、シュウ殿?」
「あ? 何だ点蔵? 俺はそろそろ日課の覗きに行くつもりなんだがお前も来んのかよ? 覗き場所は内緒だぜ?」
違う意味で行かせない方がいいかと思ったが、そこはきっと浅間殿が何とかするだろう。
何とか出来なくても制裁が来るのは確実だ。
いやそうではなくて
「じ、自分を止めに来たのでは無かったので御座るか?」
「はぁ? 何で馬鹿を止めにわざわざ俺が時間を使わなきゃいけねえんだよ。大体、俺、お前が何をするつもりとか知らねーしー」
白々し過ぎる……!
明らかに解っているのを前提の会話だっただろうに。
道理で嫌にぼやけた言葉で聞いてくると思ったら様式ではなくこういうオチに持ってくる為か。
いや、それにしても無理があるだろうとは思うが、何か最近、同じような事をロンドン塔で考えたで御座るなぁ。
だが、副長はこちらの反応に苦笑しながら
「大体、お前も俺のキャラぐらい付き合いで察しているだろうに。俺は止める側でも話す側でも問う側でも答える側でもねえよ───俺は"やる"側だろ」
シュウ殿の台詞回しに思わず自分は心の底から成程、と頷きかけた。
やる側。
確かにこれ程シュウ殿の人生を一言で纏めたのはないかもしれん。
やると決めた事をやるを地で行っている御仁だ。
だけどその台詞に続きがあった。
「点蔵。お前はどうよ? お前は"どの"側だ?」
「───」
聞かれて自分も考える。
自分はどう言った側にいたいのか。
短い時間だがそれを真剣に考え───微かな笑いと共に
「それを言って来いよ───お前の大事な人に聞かせてやれ」
はっ、と思わず顔を上げた時には既に彼の顔はこちらを見ておらず背を向けていた。
自分の答えを敢えて聞かずに去っていく背中に不覚にも尊敬の念を覚えそうになるのを堪え、だが副長の態度に忝いという念を
「───Jud.!」
審判の言葉で返した。
そうして点蔵は再び走り出した。
今度はもう止まる事はないだろう、と思いながら。
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