各々の獲得
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な他人に同情や可憐さを醸し出すような為の付き合いではないし、浅い関係ではないと信じてる。
だから自分は特別な事なぞせずに
「では宗茂様───凱旋してきます」
それだけを言い残して彼が寝ている部屋から去っていく。
点蔵は走っていた。
先程まで靄がかかっていた内面は綺麗さっぱり晴れ模様を描いている。
同時に思う事はある───これは間違いなく忍者としてはあってはいけない行為ではあると。
忍という言葉から反した行動である事は自覚している。
武蔵に余計な責を作る結末になるかもしれないというのも理解している。
だが、もう動かない理由がないのだ。
何故ならさっき馬鹿に教えて貰ったのだ。
「オメェ、何だそれ? 右肩甲骨の後ろにやけに目立つ傷が残っているぜ? 杜撰な処置でも受けたのかよ?」
その傷を自分は知っている。
その傷は英国に来た時、傷有り殿を庇った時に負った傷であり、そしてそれはその本人に処置をされた傷のはずだ。
風呂に入った時にそれを指摘され、彼女に治療された。
それが完全な形で残っていると言う。
点蔵は覚えている。
祭の最中、ついテンションが上がったせいか。それとも本心だったのか。
自分はつい彼女に聞いてみたのだ。
好いている人はいるで御座るか、と。
自分は照れてつい自分には関係ないけど、という態度を取ってしまったがその時の彼女はただ透明な笑みで
「そのような人がいたら、その人にとって一生消える事が無い傷跡を残せるような女でありたいですね」
と。
そう言ったのだ。
その言葉を自分は覚えている。
これから先、ずっとこの言葉を記憶出来るかどうかは謎だが、それでも今、この時は覚えている。
なら動かない理由がない。
行かなければ。
否。
行こう
そう思ったのだ。
義務で行くのではなく、己の魂がそこに行きたいと叫んでいるのだ。
忍者でも第一特務でも武蔵アリアダスト教導院所属の学生ではなく点蔵・クロスユナイトとして行きたがっているのだ。
自儘な本心を、しかし抑えるつもりはない。
そう思い、行くための準備を、速度を自然と上げようとしていた所で
「よう、点蔵。何時になくマジ走りしてるけどマジパシリ最中か?」
横で走っていた点蔵がいきなりびーん、と背筋を伸ばすように硬直したのを見てあん? と思った。
何やらトーリと点蔵と麻呂王がはしゃいでいるからと思ってきたら件の人物の一人が青春っぽく駆けていこうとしていたのでちょいと気配と甘歩法を使って横に並んで隣を走っていただけなのだ。
まだまだ鍛え方が足りんようだ。
その証拠に驚いた表情を帽子に乗せながら
「シュ、シュウ殿!? い、何時からそこに!?」
「ああ、お前がやけに青臭い
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