居場所は変わりなく
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がいいと言い換えようか。私は手を抜くことなど出来ないけど、気を抜くことくらいはしようと思う。
私が学ぶべき所は公孫賛からも多いらしい。これを機に彼女と友好関係を深めておきたい。実直な王としての先達なのだから。
自然体のまま穏やかな瞳で見つめてくる公孫賛を玉座から見下ろして、彼女の申し出に返答した時は上にいるのに下に思えた。まだ、私は足りない。でも圧されることは無い。彼女とはあくまで対等で、彼女と手を取るというのなら……私は孫権として、そして“蓮華”として話せば良かっただけ。
今現在、彼女と共に軍を進めている。
城を空にしてもいい、と判断を下したのだ。内政も何も文官達に全てを割り当てて、裏切りも内部工作も起こらないと信じることにした。
ただ実際、前々から不穏な動きはあった。
袁家程度が相手ならばこちらについてくれただろうが、劉の名に従いたいモノは確かに居たのだ。
此処に劉備が介入してきたことで話はがらりと変わる。
実質的な荊州の支配者はもういない。本来跡目を継ぐはずだった劉表の娘は劉備の所にいるし、劉備も同じく劉姓だ。劉表の部下達に踊らされているモノ達も掌を返しやすくなり、身の安全を保障するには十分だろう。
私達孫呉側としては腹立たしいことだが、今起きている戦を収束させてからでないと前に進めない。
――苦肉の選択、と言ってしまうのは失礼か……これを上手く利用した方が“私の描く理想”の為になる。
信頼はまだしてない。でも信用は出来る。
隣で小蓮と話ながら穏やかに馬を進めている公孫賛を見ていると不思議に信頼したくなるけれど。
彼女の穏やかさは……少し羨ましい。
「――――ってな感じでさ、あいつはいっつもバカなこと思いついて正座させられてたんだ」
「うっそ、シャオが考えてたのと全然違うんだけど……」
「普通の男だよ。バカで、悪戯好きで、意地っ張りで、しょうもない事考えてばかりで、可愛い女の子に弱い、そんな普通の奴」
小蓮はしきりに公孫賛から話を聞いていた。言葉遣いを砕いたのは公孫賛が言ってきたからだ。
今の話題は黒麒麟のこと。幽州で公孫賛が見てきた、私が戦場で対面しただけのあの男のこと。
耳に入れながら驚愕する。聞く限りでは確かに普通だった。行いにしても、平穏無事に生きている時の徐晃はそこらに居る兵士となんら変わらない。
命をゴミのように切り捨てる黒麒麟とは到底思えなかった。
どうして公孫賛は……黒麒麟に切り捨てられたはずなのにそこまで楽しげに語れるんだ。
「思い出してもへたれたり怒られたりしてる時の方が多いんだよなぁ、あいつって」
「でも仕事は出来たんでしょ?」
「そうなんだよ。変なこと思いつくし人を使うのが上手いから、適当な文官を二、三人付けるだけで大概
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