居場所は変わりなく
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て見える。救いを求めるその声は、誰も助けて等くれないのだと知らなかったあの頃にそっくりだった。
こんな時に自分はどうすればいい。母はどうしてくれた? 何をしてくれた?
考えても分からない。雪蓮は、剣を渡されて戦場に放り投げられただけだったのだから。
故に彼女は……『自分がして欲しかった事』をする事にした。
「っ……やっ。やだぁっ! おかーさんっ! おかーさん!」
暴れる少女の身体を、雪蓮は無理やりに抱きしめた。腕の中にすっぽりと納まる少女の体躯は、幼さ故の暖かさは無く、随分と冷え切っていた。
もがいて暴れて、その少女はどうにか抜け出ようと混乱の極みに居た。
「……ごめん、ね」
ぽつりと、言葉が一つ。
耳元で零された優しい声に、少女の力が少し弱まる。
鼻に突く血の匂いは、きっと嫌だろう。
臓物がこびり付いた服など、きっと気持ち悪いに違いない。
でも、雪蓮はこうしなければならない気がした。
零れる涙を止めることは出来なかった。泣くまいといつも決めていても、こんな時は涙が溢れて仕方ない。
「ごめんっ……ごめんねぇ……私が、私があなた達を守らないとダメなのに……っ……」
温もりに包まれた少女は次第に微睡へと落ちて行く。
雪蓮は村で生き残ったその子にだけ、自分の弱さを曝け出した。
†
現状の揚州は混乱の極みにある。
故に責任者たるモノが城を空にするのは悪手ではなかろうか……仕事も山積みで終わる事の無い量に夜も眠れないまま、どの選択が正しいのか決め兼ねていた頃に訪れた公孫賛の救援。
出来すぎている。余りにいい時機過ぎた。だがしかし、本人は噂以上と言っていいほど『いい人』だった。
私が話してみた限りでは表裏が無い。王たる決断を下すような、そんな駆け引きの場では確かになるほどと言わざるを得ないが、腹芸では無く実直な対応をしている時の彼女は信じがたい程に分かり易く素直だった。
半日の休日を貰い久方ぶりにゆっくりと寝て、公孫賛が建設中の店に交渉して料理人を引っ張って来たことで美味しいモノを食べさせて貰った。
正直、休んだことによって身体も心も随分と楽になった。いけるモノだと思っていたが、やはり人は休まないとダメらしい。
そうして挑んだ昼下がりの謁見。正式に、とは言ったモノの堅苦しくする気も削がれた。
――“幽州流”と言っていたけど、情報通りならあの男が来てから出来上がったモノだろう。
公孫賛は笑いながら話してくれた。彼女も私のように仕事ばかりに頭の大半を捉われて余裕も何もあったものじゃなかったのだと。
姉さまがちゃらんぽらんな事をしつつも何故か仕事が出来るのは、きっと上手く手を抜いているからなのだ。能率、効率
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