暁 〜小説投稿サイト〜
ロザリオとバンパイア〜Another story〜
第35話 もう1人の大妖
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 ジャックの腕の中には、あの少女がいる。あの男が狙ってくる事は判っていたから、直ぐに抱え上げたのだ。まだ、落ち着きを取り戻せていない様だ。腕の中で、絶えず震えているから。
 そして、前方からは巨大な津波が意思を持って襲い掛かってくる。後方には逃げ場はない。

 一応 危険な状況だ。

 勿論、ジャックにこの子を見捨てると言う選択肢などは最初から無い。

『心配するな。 必ず守ってやるさ』

 まだ、震えが止まらぬ少女を、やさしく包み込むように、腕に力を入れた。ぐっと自分の身体に抱き寄せる。


「ッ! …………あ………」

 ジャックの腕に強く抱かれた女の子は、どうやら正気を取り戻した様だ。女の子はジャックを見上げた。

『心配ないさ。全部、オレに任せておけ。直ぐに片付ける』

 顔を見て、ジャックは優しく笑いかけた。

「あ………。」

 その笑顔を見て安心したのか落ち着いたようだ。そして、驚いたのはその後のことだ。先ほどまで震えていた女の子から、突然強い妖気を感じたのだ。それも並ではない。下手をすれば、あの男よりも強大な妖気。

『えっ?』

 当然、ジャックもあまりの突然の事に驚きを隠せられなかった。突如現れた妖気を見て。


「なんだ?? この妖気は?アイツじゃない。まさか……」

 セドナである、神無木も同様に驚いていた。妖気が感じるのはあの男の傍からなのだ。そして、その妖気の質も、あの男のものではなかった。

 となれば、答えは1つしか無かった。この強大な妖気は、あの女が放っているのだという事。





「―――――――♪」





 強大な妖気を纏っているのだろう美しい歌声が、この山に響き渡った。それは、安心できるような、心地良い様。まるで、天使の歌。

 そして、歌が響き渡った次の瞬間だ。

 迫ってきた大波が、弾けて飛んだのだ。まるで小波を大波で掻き消す様な、そんな勢いだった。

『これは……なんて綺麗な歌声……。 こんな事が出来るのは、確か、セイレーンの歌…か? ……って言うか君ってもしかして』

 ジャックは、そこであることに気がついた。今、腕の中で必死に歌っている女の子の姿。確かにまだ幼いが、遠い過去に見たことのある容姿。美しい背中に生えている翼。

 そして、何よりも彼女の名前だ。あの神無木が言っていた名前。『そしてこの子の名前は《燦》って言うんだけど。この子も素晴らしい力を秘めていてね』。


(《燦》……ってその名前! あああ!!! 今思い出した)

 この少女の正体、それは、《音曲の大妖セイレーン》だと言う事、そして 後に陽海学園生徒となる《音無(おとなし) (サン)》だった。
 それも
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ