無垢の時代
廃墟を彷徨うワガママ娘
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いような気がする。
「しかし、黙って見送るとは思わなかったな。アリサのことだから、意地でも全て白状させるとばかり思っていたが」
どこまで本気でそう思っていたことやら。受話器越しに聞こえる笑い混じりの声に思わずため息をつく。
「それは全部終わってからよ」
今聞いてしまえばきっと止めてしまうから。例え止められないと分かっていても。それに、
「どうせアイツの事だから、あの子をあんな目にあわせた奴をとっちめに――ううん、下手をすればソイツもまとめて助けに行こうとしてるに決まってるわ。なら、水を差す訳にはいかないでしょ?」
本当に聞いてしまえば――やっぱりその時はアタシも止めないと思う。どれだけ止めたいと思ったとしても、多分止めることはできない。それなら、今は待つしかない。アイツがアタシの親友と、まだ見ぬ誰かを守ってくれると信じて。
「大丈夫よ。アイツがついているなら」
そして。アイツも無事に――いつも通り飄々として帰ってくることを信じて。
「……なかなか思うように休みがとれず、悪いと思っている」
突然、パパはそんなことを言った。そして――
「だが、少なくとも男を見る目は養われているようだな。これで少しは彼に申し訳が立つ」
苦笑か、それとも微笑なのか。判断がつかない笑い声とともにこう続けた。
「父親としては複雑だが、彼なら安心かな」
「どーいう意味よ!?」
何やら不穏なことを言われた気がする。
「それはもちろん、将来の花婿候補さ」
「それはないわ! 絶対ない! あんなスカした奴となんて誰が!」
全力で否定したが、パパは呑気に笑うばかりだ。ええい、まったく。いきなり何てことを言い出すんだか。
(無理はしないで。でも、早く帰ってきなさいよ。この仕返しは絶対にするんだから!)
空になってしまったケージを見やり、アタシは八つ当たり気味に囁いた。
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