無垢の時代
廃墟を彷徨うワガママ娘
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「じゃあ、あの金髪の女の子との馴れ初めでも訊かせてもらうよ」
アルフがそう言ったのは、バニングス邸にて管理局との取引を済ませてから……加えて言えば、海上で二人と別れてから何があったかを聞き出した後の事だ。
「アリサの事か? 構わないが、別に大して面白くもないぞ?」
「別にいいさ。要はアンタの気が紛れりゃいいんだろ?」
その通り。何せ、今の俺は殺戮衝動に蝕まれている。しかもそれは二人の身に起こった事を聞いて、ますます強まった。だが、最悪でもバニングス邸から御暇するまで正気を保たなければならない。衝動に呑まれないためには、何でもいいから考えていなければならなかった。アルフに話相手を依頼したのはそのためだった。
(さて。何処から話したものか……)
狙い通り、意識を殺戮衝動の誘惑から逸らして考え込む。もっとも、別に勿体つけるような事は何もない。さして珍しくもない事だった。少なくとも、俺にとっては。
(それはそれでどうなんだろうな)
事の顛末をざっと思いかえしてから、ふとそんな事を思う。だが、これまでの自分の生涯を振り返れば、やはり取り立てて珍しくもない事だった。我が事ながら嘆息を禁じえないが……この際だ。暇を潰す役に立ってくれればそれでいい。
「そうだな。もう三年は前になるか――」
……――
「アンタ達が今何をしてるかはもう訊かないわ」
その言葉を口にするのには、随分と自制心が必要だった。本当に、我ながら良く我慢したと思う。本当なら、今すぐに全てを自白させてしまいたいところだ。
「でも、いい? 必ず帰ってきなさい。勝手にどこかに行っちゃダメよ?」
それを我慢したのだから、これくらいの注文は許してもらっていいだろう。言葉にしてから勝手に決める。
「大丈夫。どこにも行かないよ。友達だもん」
目を潤ませる親友――なのはの言葉に頷き返す。それと同時に、確信を持った。
(何か危ない事に巻き込まれてるわね)
だから光はあの時と同じ格好をしているのだ。それもまた、根拠なく確信を持つ。前にあの格好を見てからどれくらい経っただろうか。確か――
(もう三年も前になるわね)
今目の前にいる親友達を親友と呼ぶようになってから。
さらに言えば、その転機となったとある事件――アタシの人生においてまず間違いなく大事件と呼べるし、それを上回る事は早々起こらないだろう……いや、起こって欲しくもない出来事が起こってからでもある。だからこそ、一抹の……いや、それ以上の不安を覚えている。とはいえ、もしも本当に事があそこまで深刻なら話を打ち明けられてもただ聞く以外の何も出来ない。それが歯がゆく、苛立たしい。このまま黙って見送って、無力な自分に怒る事しかできない。ああ、全く本当に苛立たしい。でも、待っている事しかできない。それを認めるし
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