第六幕その五
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「お腹一杯だったり追い詰められていないと大丈夫よ」
「それが蛇なんだね」
王子はしみじみとして呟きました。
「僕は先生にそのことを教えてもらうまで誰彼なく襲い掛かって来るって思っていたよ」
「それは偏見よ」
「そうなんだよね」
「そのことはわかっていてね」
くれぐれもという蝮さんの口調でした。
「私達の毒はそうしたものよ」
「うん、僕はもうわかっているから」
「僕もだよ」
トミーも言います。
「しっかりとね」
「だから安心してね」
「それは何よりね、じゃあ安心してお話出来るわね」
「それでだけれど」
先生が蝮さんにあらためて尋ねました。
「君の最近は」
「この辺りの蝮全体でいいかしら」
「うん、どうなのかな」
「食べるものがあって皆天敵はいても」
「それでもだね
「そう、普通にね」
それこそというのです。
「数もそれなりにいて普通に暮らしてるよ」
「それは何よりだね」
「そうでしょ」
「幸せっていえば幸せよ」
「そうみたいだね」
「まあこの辺り一番怖い熊さんが近くにいるけれど」
蝮さんは自分から言いました。
「それに変わった山犬さんもすぐね」
「この辺りにいるんだ」
「あれっ、先生何か」
蝮さんは先生のその目の色が変わったこと気付きました、それこそです。
一瞬で目の色が変わったのです、輝きがこれ以上に増して。それで蝮もその目を見てそのうえで言ったのです。
「さらに機嫌がよくなったわね」
「若しかすると知れないからね」
「若しかするとなの」
「そう、よくなったから」
だからだというのです。
「楽しみなんだ」
「それじゃあその山犬さん達のところに」
「行くよ」
「是非になのね」
「そう、行くよ」
こう言ったのです、先生は。
「これからね」
「そうするのね」
「うん、ただ蝮さんはその山犬さん達を見て思ったことは」
「私が?」
「あったかな」
「そうね、妙にね」
蝮さんは先生に答えて言いました。
「動きが速くて身体つきもね」
「身体つきもだね」
「普通の山犬さんとは違っていたわね」
「よし、確実だよ」
「確実って?」
「これで殆どね」
こうも言う先生でした。
「確かになったよ」
「確かって」
「何が?」
「何が確かなの?」
「さっきから先生妙に含んだ感じだけれど」
「うきうきとして」
「どうしたの?」
動物の皆はまたここでいぶかしむのでした。
「一体」
「今も確かになったって言うし」
「どうかしたの?」
「再会のこと?」
「そうだよ、さっきの話で確かになったんだ」
先生はいぶかしむ動物の皆に笑顔でお話するのでした。
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