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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
23.君の希望を僕にくれ
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者エインフェリアが説得役に抜擢されるも、実は彼女の方が女子力が低い事が発覚したり………。ともかくここ数日のエタルニア司令部は連日大変な騒だった。

 一番効いたのはやはり、彼女の父ブレイブが「試す」と言ったからだろう。
 きっと彼女は剣術の訓練を始めてからずっと、それを待っていたのだ。
 偉大なる父への憧れ、故郷への想い。そのために彼女は一刻も早く強くなろうと努力した。
 自分の未熟さを埋めるために毎日訓練に明け暮れ、何年もこの凍土の地で雌伏していたのだ。
 その思いのたけと、格上であるカミイズミとの訓練が、彼女の才能をとうとう解き放ってしまった。

「そりゃあッ!!」

 ガキィィンッ!!と音を立ててカミイズミの剣の腹が打ち据えられる。
 剣を取り落しかねない衝撃に耐えて間合いを取るが、その一瞬が隙となって追撃のイニシアチブを許した。カミイズミの足が一歩どころかどんどん押し込まれる。

「ぬうっ!?今のは、バルバロッサの『牙折り』か!?」

 『牙折り』は相手の武器を狙った力任せの叩きおろし攻撃だ。本来は海賊の武器である斧の重量から繰り出される破壊力を利用した技だが、イデアがやったのはそれの刀版。絶妙なタイミングで刀の腹に刃を叩きこむことによって相手の次の動きを阻害する戦略的な一手だ。

「その通り!そして……でりゃあああああッ!!」
「ぐっ!!『踏み込み』……ハインケルが得意とする防御無視の突撃技か!」

 体勢を崩しての確実な一撃。カミイズミはそのイノシシのように荒々しい斬撃を受け流せずにまともに受け、苦悶の声を漏らす。前にものまねで実行した両手持ちの攻撃力を最大に生かす踏み込みと、そこに繋げるために放った『牙折り』。今までの考えなしな突撃とは違う明確な戦略を伴った行動に、カミイズミはこれ以上手加減込みでイデアを押さえつける事は出来ない事を悟った。

 元々非凡な腕前を誇っていたイデアの太刀筋に見よう見まねの我流戦術が混ざったことにより、既に彼女のポテンシャルは準アスタリスク所持者級にまで高まっている。加えて彼女が念頭に置いている仮想の敵はあの元帥ブレイブなのだ。その気合の入りようと集中力は今までの比ではない。

 エタルニアが生み出した未来の剣豪の苛烈な攻めに、人知れずカミイズミは歓喜の笑みを浮かべる。

(ここ数日の訓練がまさかここまで彼女の力を高めるとは!あな嬉しや……ブレイブ!君の娘はもう私の手には負えぬかもしれんぞ!!)

 だが、技術的に完成された剣士とて、その信念が折れれば脆く崩れ去ってゆくもの。
 信念を砕く苦難の試練には二種類ある。

 彼女に立ちはだかるブレイブの試練は「力の試練」。
 抗いようもないほど強大な力を前にすると、人は挫折を味わう。相手を絶対的に打倒する闘争
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