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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
23.君の希望を僕にくれ
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「今なら特別サービスで――あの巨大な大穴を塞ぐ方法だって教えちゃうわよ?」


 妖艶な微笑み浮かべる灰色の精霊「エアリー」の言葉を、ティズはゆっくり時間をかけて咀嚼し、やがてその意味を理解した。エアリーと名乗るこの自称精霊はつまり――このノルエンデを呑み込んだ災厄の穴を塞ぐ方法を知っている?

「この穴、とっても危険だわ。溢れる瘴気は魔物を活発化させ、邪悪な波動は次第に世界を司る4つのクリスタルをも闇で覆うでしょうね……海は腐り、大地は荒れ果て、火山は爆発し、風さえも止まり……ゆっくりとこの世界を闇に沈めていく」

 囁くように、エアリーがティズの顔を横切る。
 その姿を追いかけて振り返ると、腰の後ろで手を組んだエアリーが自慢げに胸を張っていた。

「でも、世界を救う方法はちゃんとあるわ。もっとも……見ての通りエアリーはか弱い精霊だから方法を知ってても実行できないんだけどね?――そこで、あなたよ」

 エアリーの小枝より細い指が、ティズの鼻をつん、とつついた。

「あなた、悲しい顔をしてる。大穴に大切なものを呑み込まれたでしょう」
「……………うん。全部……全部持って行かれた」

 あの大穴が、自分の胸にも同じ穴を空けてしまったような気がする。
 きっとこの穴は二度と消えることはないだろう。
 たった一人だけ惨めに生き残った。何も助けることが出来ないまま。

「でも、あなたはまだ生きてるわ。戦うことだって出来る。短剣に付いた魔物の血がその証拠」
「大したことじゃないよ……羊を襲いにときどき魔物が来るから、それを狩ってるうちに慣れただけさ……」
「でもその強さがあなたをエアリーの前まで導いた。大穴はあなたという一つの光を消せなかった」

 確かに、そう言えなくもない。この短剣さえ満足に扱えないのではこの大穴を確認する前に魔物に食い殺されていただろう。いや、それ以前に普通ならあの場で死んでいてもおかしくはなかった。
 幻想的な月明かりに照らされたエアリーの顔が、ティズに近づく。

「エアリーね?これって運命だと思うの。あの災厄からあなたが生き残ったのは、何か為すべき使命があったから……そう考えられないかな?」
「僕の、使命?」
「そう、使命。それが世界を救うことか、そうでないかまではエアリーにもわからない」

 でもね、とエアリーは優しい笑顔でティズの肩に座った。

「この世に無駄なものなんて何一つないんだ。生き残ったあなたの命だってそう。例えそれが辛くて苦しい経験だったとしても……それはあなたの未来へ確かに繋がってる筈よ……まだ聞いてなかったわよね。あなた、名前は?」
「……ティズ。僕は、ティズ・オーリア………」

 言われるがままに、ティズは名乗った。
 エアリーの言葉は
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