21部分:第二十一章
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下ろすのであった。
「それは何よりです」
「優しいのね。危害を加えようとしていた相手に」
「それはそうですけれど」
「いいわ。その優しさが気に入ったわ」
また笑みを浮かべて述べる。
「それがね。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「二人で何所か楽しい場所に行くのはどうかしら」
口元に含み笑いを浮かべて提案するのだった。
「楽しい場所!?」
「ええ」
美女の心の中に滲み入らせるようにして言葉を囁く。
「そうよ。どうかしら」
「それはいいですけれど」
「悪い場所ではないわ」
相手が不安を感じているようなのでそれを打ち消す為にこう答えるのであった。
「本当にね」
「そう言われても」
流石に上海のこうした街を歩いているだけはある。沙耶香の言葉もそう簡単には信じようとはしない。しかしそれならそれで沙耶香にも方法があるのだった。
「申し訳ありませんけれど」
「それじゃあね」
「はい?」
「これを見て」
出してきたのは鏡であった。そこには美女が映っている。
その隣には沙耶香が。その沙耶香の目が赤く光ったのだった。
「えっ」
「信じてもらえるかしら」
目が光ったのは一瞬のことだった。沙耶香はその後で美女を横目で見ながらまた問うた。
「私の言葉は」
「はい」
美女の目の光が消えていた。そうして虚ろな声で沙耶香の問いに答えた。
「わかりました。貴女の言葉でしたら」
「私は花を傷つけるようなことはしないわ」
美女は思ったより小柄だった。沙耶香はその小さな身体をその左手に絡め取って告げた。
「それは安心していいわ」
「ですね。貴女なら」
「だから。行きましょう」
美女を横目で見たまま艶美な笑みを浮かべてみせた。
「二人でね」
「ええ、二人で」
こうして二人は夜の街に消えていった。沙耶香にとってみればコインの嬉しい知らせであった。それを有り難く受け取って堪能する。彼女にとってはそうした夜であった。
夜が明けて繁華街を後にする。その横にはあの美女がいる。彼女は赤い顔をして沙耶香に寄り添うようにして歩いていた。
「女もいいものでしょ」
「日本ではいつもこうなのですか?」
「日本でだけじゃないわ」
沙耶香は美女の顔を覗き込みながら答えた。
「あちこちでそうなのよ」
「あちこちというと」
「私の愛した女性はそれだけいるということよ」
漁色家の沙耶香のことである。これ位は当たり前のことであった。美女、美少女を見ればその毒牙を煌かせる。それは何処でも同じなのであった。
「わかったかしら」
「そうなのですか」
「そんな私は。駄目かしら」
「いえ」
沙耶香のその言葉にゆっくりと首を横に振るのだった。
「そんな貴女だから。昨夜は」
「その言葉、有り難く受け取って
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