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鎧虫戦記-バグレイダース-
第38話 光の中にたたずむ誰かへ
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かけて取り出すと
それによって山が崩れてしまうというものだ。
変な日本語だが、不安定に安定しているのである。

「じゃあ、俺の冷気でそこら一帯の岩を全部固めて持ち上げるか?」

リオさんがそう提案した。しかし、迅は首を横に振った。

「だめだ。それだと全部の岩が凍り付く前に
 隙間と隙間が氷で塞がって空気が供給されない。
 岩をすべてどかす前に二人が窒息死する」

リオさんが苛立ちに頭を掻きながら言った。

「そもそも、二人は生きているのか?」
「えっ‥‥‥‥ホークアイと‥‥‥ジェーンちゃんが‥‥‥‥」

マリーの目から涙が滲み出て来た。
顔がくしゃくしゃになりかけた瞬間にアスラは言った。

「いや、多分二人は生きてる」
「えっ!?」

マリーとリオさんは驚いた。
アスラは理由を述べた。

「葉隠の性格を汲んで仲間も多分即死レベルの罠を
 設置することはないと思う。それに、さっき葉隠が
 『アイツ等の運に賭けてみたくなった』って言ってたんだ。
 岩の下敷きになって死ぬような罠なら何も賭けようがないからな」

それを聞いたマリーは涙を手で拭いて息をついた。

「そっか‥‥‥良かった‥‥‥」
「でも、埋まってて危ない事に変わりはないぞ?」

リオさんの言う通りだった。
二人が生きていることが分かっても
岩をどける方法が分かったわけではないからだ。

「迅、お前の"超技術"ならいけるか?」

リオさんが迅にそう訊いた。
そうだ、そう言えば迅も"超技術"を使えるのだ。
少しの間、考え込んで彼は答えた。

「‥‥‥‥無理だな。乗っている岩の数が分からない。
 それに上から見えるだけでも大量に積まれてるから
 この岩を全てどかすのは難しいだろうな」

どういう"超技術"かは分からないが
さすがの迅でも無理との事らしい。

「マリーはどうだ?」

考えていたマリーは言った。

「私の"空間切断(スペースカッター)"は名前通り空間を切るだけだから
 切った瞬間にそこから全部崩れちゃうと思う。
 それに、最近になって加減は出来るようになったけど
 どのくらい深いか分からないし、間違って二人まで
 怪我させそうだから、あんまりしたくない‥‥‥‥」
 
マリーは自分のロシアでの"超技術"の発動を思い出していた。
加減が分からないで、コップどころかその向こうのドアまで
斜めに切れたのだ。もしも、このようなミスをしてしまって
二人が死んでしまったなら、おそらく彼女は立ち直れないだろう。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥クソッ」

アスラは拳を握りしめた。

「オレも"超技術"が使えれば‥‥‥‥‥」

その拳を顔の前に上げて睨みながらつぶやいた
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