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鎧虫戦記-バグレイダース-
第38話 光の中にたたずむ誰かへ
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「テメェ!何しやがった!!」

アスラは葉隠の胸ぐらを掴んだ。
表情と襟を掴む手からは怒りが感じられた。

「俺は何もしていない。お前らとはもう
 敵対する気はないからな。やったのは俺の仲間だ」

葉隠は傷を押さえたまま淡々と言った。

「敵対する気がないなら何で止めなかったんだ!!」

アスラは葉隠に向かって叫んだ。

「タイミングは向こうに任せてある。
 止めるには仲間と距離があるし
 なにより連絡手段がなかった」

葉隠は傷を押さえていない手を広げた。
その表情は怪我人のわりには余裕そうだ。

「‥‥‥‥‥そうか‥‥‥‥」

アスラはそうつぶやくと
葉隠の胸ぐらから手を離した。

「じゃあ、お前は何であの時笑ってたんだ?」

アスラは比較的落ち着いた声で訊いた。

「‥‥‥‥‥賭けて見たかったのさ」

その一言は意外だったのか
アスラの表情は驚きの一色に染まっていた。

「お前らといた‥‥‥‥アイツ等の‥‥‥運を‥‥‥な」

そう言うと、葉隠は気絶した。
アスラの脳裏に止めを刺すべきかという疑問がよぎったが
彼自身はそこまでの悪人ではないようなので
殺すまでのことはないだろうということで、しないことにした。

「‥‥‥アスラか?」

葉隠を見下ろしていたアスラの後ろから
いつものあの声が聞こえたので、アスラは振り返った。

「迅!」

そう、迅がついに麻酔が切れて目を覚ましたのだ。
右手で頭を押さえたり、叩いたりしている。
無理やり薬で眠らされた分のガタがきているようだ。

「‥‥‥‥ッッ!‥‥‥‥麻酔針か‥‥‥」

迅は右肩から麻酔針を引き抜くとつぶやいた。
それを捨てると、アスラが近くに寄って来た。

「迅!大丈夫そうか?」
「あぁ‥‥‥‥頭が少し痛いぐらいだ」

そう言いながら迅が前を向くと
さっきまでアスラに隠れていた葉隠が
木にもたれ掛かっているのが見えたようだ。

「そいつは‥‥‥‥‥お前が倒したのか?」

それを聞かれた瞬間、アスラは
若干悔しそうな表情を見せた。

「いや、ホークアイと一緒に倒した」

それを聞いた迅は驚いた。

「ホークアイとやったのか。あいつもなかなかやるなぁ」

そして、嬉しそうにこう言った。
しかしアスラは笑ってはいなかった。

「でも、罠にはまった」

これを聞いた迅の表情は強張った。
若干の煙、爆発により変わってしまった地形。
周りの状況からすぐにそれを理解したのだろう。

「‥‥‥‥‥‥分かった」

迅の声は落ち着いているようだが
動揺は隠せていなかった。

「とりあえず、あの男から罠に着いての話を聞―――――――!?」


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