暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン30 鉄砲水と移動砲台と侵略者
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こいつなんじゃ、とかいろいろツッコミどころはあるけれど、とにかくちょうどそのとき近くにいた人間の体を使ってデュエルモンスターズの精霊らしく決着をデュエルでつけることにしたらしい。俺が勝ったらなかったことにしてもらおう、という奴だ。まあこの部分はデュエリストなら至極当然だね。

『そういうわけでUFOも自動修復装置が仕事を終えている頃でしょうし、私そろそろ自分の世界に帰りますね。お騒がせして申し訳ありませんでした』

 ナメクジのように、といえば聞こえは悪いが、本当にそうやってずるずると宇宙船に向けて進んでいくグレイドル・スライム。その背中を見送ろうとして、忘れていたことを思い出した。

「あれ、待って待って!このグレイドルカード、君のでしょ?ちゃんと持っていかないと」
『いえいえとんでもありません、今回迷惑をおかけしたせめてものお詫びの品だと思っておいてください〜。って、なんか押しつけがましいですね最後まですいません、いらなければ海に捨ててもらっても全然かまいませんので!』
「でも……」
『それに、さっきまた勝手に心の中を覗いてしまって。そのことは申し訳ないですしこんなこと言うのも差し出がましいようですが、今あなたデッキに迷いがあるんですよね?レベルもステータスも低い私たちですが、せめて何かお役にたてるようでしたら喜んで力をお貸ししますので!では、さようなら!』

 それ以上は声をかける暇もなく、宇宙船が宙に浮きあがる。その後カクカクと何度も左右に曲がりながら上昇し、あっという間に見えなくなった。

「さて、俺はもう寝るとするか。清明、お前も寝坊するなよ?お前の作る朝飯はホワイト寮で食うものとは比較にならんほど美味いんだからな、寝過ごしたりして朝から俺の期待を裏切ったりしたら承知しないぞ」
『んもーアニキったら、相変わらず素直じゃないんだから〜』
「なっ!?ええい黙れ鬱陶しい、この雑魚モンスターめぇ!」
『キャー、アニキが照れたー!』

 騒がしく帰っていく万丈目とおジャマ・イエローを見て、手元のデッキに目を落とす。グレイドル、か。これからよろしく、という意味を込めてそっとデッキを撫でてから、腰のデッキケースにまとめて戻した。
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