Episode 2:metamorphosis―豹変―
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
柚夜はゆっくりと口を開いた。
「―――」
何かを言った。――が、あたしは、なんと言ったか分からなかった。
聞こえにくかった訳じゃなく、異国の言葉を言われて『何ソレ?』となる感じに近い感じだ。
あたしは、ちゃんと聞いたことがある、見たことのある単語だった。
――『別れよう』――
聞いたことがあるけど、それはドラマや友達の相談でだけ。見たことがあるけど、小説や漫画でだけ。直接言われたのは、初めてだった。
「……別れよう…って……ゴメン、意味が分からない」
意味を教えて欲しい。辞書並に詳しく。とっても詳しく。
「えっと…まず、謝んなきゃだな。悪ぃ」
「……謝る意味が分からない。別れるの意味も分からない。教えて…」
あたしは、何も考えられなくなっていた。
「ねぇ、教えてよ!!」
その台詞が合図だったかのように、柚夜がいきなり握っていた手を振りほどいた。
手の平には、僅かな温もりが残っているが、徐々に失われていく。その温もりが消えるのを体が拒んだせいか、勝手に拳をつくった。
そして、再び訊ねる。
「…ねぇ、教えてよ…」
「………」
返事は無い。
公園には街灯の灯りがあるものの、街灯から少し離れたところは真っ暗だ。その暗闇の先には人の気配が全く感じられない。
そんな暗闇と静寂が支配する方へと柚夜は歩き出す。
「……ねぇ…」
もう耐えられなかった。
涙を流さないように、壁を作っていたのに、その壁は音を立てることなく崩れていく。そして崩れていくと共に、涙が溢れ出した。
「………」
やはり返事は返ってこない。
何か悪いことでもしたのだろうか? それはそれで、言ってもらわないと分からない。謝って欲しいなら、謝って欲しいと言って欲しい。そしたら、謝る。泣きならだけど、謝る。もしかしたら、涙と一緒に鼻水まで流れ出すかもしれない。それでも、謝る。
そんなことを考えながらも、柚夜を見続ける。……が、柚夜本人は、目を合わせないどころか、顔すらも合わせようとしてくれない。
「……ちょっと…」
柚夜が近くにあったブランコに座る……のが、うっすらと分かった。
そして、ゆっくりとブランコを漕ぎだす。
キィーッコー、キィーッコー
公園にブランコの音だけが響く中、柚夜は口を開いた。
「…期限切れってヤツだ」
「……期限………切れ…?」
「あぁ、そうだ」
意味が分からない。
期限切れ? 何? 何が?
頭の中には、《期限》関連のワードが浮かび出す。
提出期限、賞味期限………消費期限。
最後の方は、浮かばない方が幸せだったワード。なぜなら、消費期限が切れた食品は捨てられる。そしてあたしの|何か(・・)の期限が切
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ