暁 〜小説投稿サイト〜
蒼翠の魔法使い
Episode 2:metamorphosis―豹変―
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れた。ということは………捨てられる?
 いや、あたしの考え過ぎなのかもしれない。一応ちゃんと聞かないと。
「……どういう…こと? 詳しく、詳しく教えてくれない?」
「あぁ、いいぜ。お前にコクる前の話だ」
 そういうと、柚夜は一言だけ言う。
「俺と七桜(なお)達でゲームをやってよぉ、俺が負けっちまったんだ。んで、罰ゲームで誰かと高校二年生(こーに)まで付き合う」
「意味が……わからない…よ…」
 雪降る公園には、呆然ぼうぜんとするあたしがいて、黙々と一方的に話す柚夜がいた。そう思うくらい、他人事のように感じられる。
「コクる相手は、テキトーでよ」
「……えっ…?」
「んで、たまたまお前になったわけ」
 どんどん、柚夜の態度が変わっていく。そんな変化に気遣(きづか)う余裕はとうに無くなっていた。
「…えっ…? じゃあ……柚夜は……あたしのこと……」
「あぁ、好きとかマジでねーわ」
「…嘘……でしょ…?」
「んな、ジョークなワケねーじゃん」
 体に雷が落ちた様な衝撃。立っているのがとてつもなく辛いくらいに、衝撃を受けた。頭の天辺(てっぺん)から足の指先までジリジリとする感覚。
 ――自分は偽物の恋をしていた。
 あの時一緒に行った遊園地や喫茶店などで、見せた柚夜の笑顔は偽物で、キスをして『大好きだよ』と言いあって抱きしめられた時のあの言葉、行動、全てが偽物だった。
「お前を選んだのは、七桜だぜ? 七桜がよぉ『ウチさぁ、珠澪(みれい)とチョー仲良いよ? ウチからなんか吹き込んどいてやるから、うまくやんなよー』だってよ。勝手に決んなって話だよなほんと」
 七桜とは小、中、と同じだった。しかも、小学生の頃はよく遊んだり、恋バナなどもした。そんな七桜が……。
「………」
 返す言葉が見あたらなかった。
 頭が、ぼーっとして脚に力が入らなくなって、やがて座り込んでしまう。
 地面にスカートの布一枚を(へだ)てて接している、(ひざ)がとてつもなく冷たい。けど、脚には力は入らない。
 ちょこちょこ(ほお)に当たる雪は、時間と共に増していく。
 徐々に頬からは、温もりが消えていく。そんな中、大事な何かが、暖かな水滴(すいてき)と共に頬を伝って、ゆっくりと()れていき、そして、(あご)から(したた)り落ちる。
「んじゃ、そーゆー事だ。俺、帰るわ。あー(さみ)ぃ」
 柚夜がブランコから立ち上がり、あたしの横を通り過ぎて公園から出た。……が、すぐに立ち止まった。
 少し期待してしまう。
 実は嘘でした。なんて言いそうで……。
 でも、そんな言葉は出るはずもなく、出た言葉は――
「今夜、家に誰もいねぇーから、ヤってくれるなら別れないでやる」
 何かが切れた。
 その何かが切れたことによって、脚に力がは入り
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