【第一章】 プロローグ(全3話)
Episode 1:beginning―始まり―
[2/2]
[9]前 最初 [1]後書き [2]次話
あたしは含まれていなかった。何故ならあたしは――
「おぉ、悪りぃ。待たせた」
彼は、あたしの彼氏である、柚夜だ。中学生の頃は普通の男子だったけど、高校生になってから茶髪になり、ピアスを付けて、チャラチャラした感じになった。
それだけで、柚夜を嫌いになるわけじゃないけど、どちらかというと、中学時代の柚夜の方が良かった。とは思う。
「そうだ、帰りに公園寄ってかね? お前と話してぇー事があるからよ」
「えっ? あっ、う、うん、いいよ、行こう」
あたしはマフラーをゆっくりと首に巻いて、手袋を――
あれ? 忘れてきちゃった。
しょうがない。ちょっと――いや、結構恥ずかしいけど、手……でも繋いで一緒に帰ろうかな。
そう決心すると、机に置いていた鞄を持ち、教室を出た。
あたしと柚夜は公園へと続く道を二人だけで、歩いていた。
この街は雪が降ることが多い。それがクリスマスイブ二日前――十二月二十二日となれば、尚更だ。
幸いなことに今日は、雪はまだ降っていない。
「寒いね」
「あぁ、そうだな」
柚夜はぶっきらぼうに答える。
それにイラッときたあたしは、繋いでいた手をぎゅっと力を込める。
けれど柚夜は顔をピクリとも動かさず、歩き続ける。
あたしの力じゃ痛くないのかな?
そう思うと、余計に力が入った。
公園に着いた頃には、太陽は完全に沈んでいて、暗くなっていた。暗くなった辺りを照らしてくれているのは、公園の中に何本か立っている街灯のみで、公園の外は真っ暗だった。
このままだったら気温は下がる一方で、下手すれば雪でも降って来るかもしれない。なので、ここは早めに切り上げるために、話を早く終わらせないと。
「話したいことって何? 早くしないと風邪引くよ?」
柚夜の顔を覗き込みながら言うが「…まぁ……な…」と歯切れの悪い言い方をして、あたしから、スッと目を逸らす。
目を逸らされた瞬間、鼓動が高鳴った。最悪の事態を想像してしまった。
――別れ…。
高鳴る鼓動は収まるどころか大きくなっていく。やがて、柚夜にも聞こえるんじゃないかと思えるほど大きくなっていく。
あ、あたしから話を引き出さないと……。
「…あっと、えっと……」
というか、あたしって何考えてるんだろう……そんな事あるはず無い。皆無だ。
そう思うと高鳴っていた鼓動は、嘘のように収まっていき、肩の力が抜ける。
ふーっ、と一息ついて訊いてみる。
「…話したいことがあるんだよね……言って…」
「あぁ、そうだな…」
逸らしていた目を向けてきて、あたしと柚夜は目が合う。
「えっと…な……」
そしてゆっくりと、柚夜は口を開いた――。
[9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ