暁 〜小説投稿サイト〜
蒼翠の魔法使い
【第一章】 プロローグ(全3話)
Episode 1:beginning―始まり―
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あたしは含まれていなかった。何故ならあたしは――
「おぉ、悪りぃ。待たせた」
 彼は、あたしの彼氏である、柚夜(ゆずや)だ。中学生の頃は普通の男子だったけど、高校生になってから茶髪になり、ピアスを付けて、チャラチャラした感じになった。
 それだけで、柚夜を嫌いになるわけじゃないけど、どちらかというと、中学時代の柚夜の方が良かった。とは思う。
「そうだ、帰りに公園寄ってかね? お前と話してぇー事があるからよ」
「えっ? あっ、う、うん、いいよ、行こう」
 あたしはマフラーをゆっくりと首に巻いて、手袋を――
 あれ? 忘れてきちゃった。
 しょうがない。ちょっと――いや、結構恥ずかしいけど、手……でも繋いで一緒に帰ろうかな。
 そう決心すると、机に置いていた鞄を持ち、教室を出た。

 あたしと柚夜は公園へと続く道を二人だけで、歩いていた。
 この街は雪が降ることが多い。それがクリスマスイブ二日前――十二月二十二日となれば、尚更だ。
 幸いなことに今日は、雪はまだ降っていない。
「寒いね」
「あぁ、そうだな」
 柚夜はぶっきらぼうに答える。
 それにイラッときたあたしは、繋いでいた手をぎゅっと力を込める。
 けれど柚夜は顔をピクリとも動かさず、歩き続ける。
 あたしの力じゃ痛くないのかな?
 そう思うと、余計に力が入った。

 公園に着いた頃には、太陽は完全に沈んでいて、暗くなっていた。暗くなった(あた)りを照らしてくれているのは、公園の中に何本か立っている街灯のみで、公園の外は真っ暗だった。
 このままだったら気温は下がる一方で、下手すれば雪でも降って来るかもしれない。なので、ここは早めに切り上げるために、話を早く終わらせないと。
「話したいことって何? 早くしないと風邪引くよ?」
 柚夜の顔を覗き込みながら言うが「…まぁ……な…」と歯切れの悪い言い方をして、あたしから、スッと目を逸らす。
 目を逸らされた瞬間、鼓動が高鳴った。最悪の事態を想像してしまった。
 ――別れ…。
 高鳴る鼓動は収まるどころか大きくなっていく。やがて、柚夜にも聞こえるんじゃないかと思えるほど大きくなっていく。
 あ、あたしから話を引き出さないと……。
「…あっと、えっと……」
 というか、あたしって何考えてるんだろう……そんな事あるはず無い。皆無だ。
 そう思うと高鳴っていた鼓動は、嘘のように収まっていき、肩の力が抜ける。
 ふーっ、と一息ついて()いてみる。
「…話したいことがあるんだよね……言って…」
「あぁ、そうだな…」
 逸らしていた目を向けてきて、あたしと柚夜は目が合う。
「えっと…な……」
 そしてゆっくりと、柚夜は口を開いた――。
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