暁 〜小説投稿サイト〜
蒼翠の魔法使い
【第一章】 プロローグ(全3話)
Episode 1:beginning―始まり―
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 あたし達の住むこの街には、『魔女がいる』という噂がある。
 魔女は人を捕らえては食べる、人を捕らえては食べるをただひたすら、繰り返すらしい。
 何故(なぜ)なのかは分からない。
 食欲を満たしたいのかもしれないし、料理されるときに人が叫ぶ悲鳴が好きなだけで、ついでに食べているのかもしれない。どちらにせよ途轍(とてつ)もなく恐ろしいことだ。
 幼い頃の話なのだが、悪戯(いたずら)や喧嘩をしているとよく、母親に「悪いことばかりしていると、魔女に食べられるよ!」と怒られたものだ。もちろん幼かったあたしは信じていたが、今となっては到底信じるはずもなかった。
 けど、信じないからと言って悪戯をするわけでもない。高校二年生になるのだ。それくらいの常識はわきまえている。
 最近になってふと思った。

  ――本当に魔女はいるのだろうか――


 昨日転入してきたばかりの転入生――十燎時(じゅうりょうじ) 真夏人(まなと)の周りには、クラスのメイトの他、クラス外から来た人で未だに賑わっていた。
 昨日の熱が冷めてないことが意外だ。と思いながら珠澪(みれい)は十燎時の方を見ていた。
 十燎時は質問攻めにされていて、慌てふためく姿や時折、顔を真っ赤にする姿を見せていた。
 珠澪から十燎時に対する印象は、物静かで読書でもしていそうな印象がある。そんな静かな印象を漂わせつつも、質問攻めにされてどんどん体力を削られていく十燎時がおもしろく感じた。
「ふふっ」
 つい笑ってしまった。
 普段人に興味を持たない、珠澪はいつの間にか十燎時に興味を持っていた。
 珠澪には彼氏がいる。今更別の男子に興味を持ってもどうしようもな――
  キーンコーンカーンコーン―…
 珠澪は思考をぷつりと切断する。
 六時限目の開始を知らせる鐘だ。その鐘は、甲高い音が校内に鳴り響かせる。
 他の学校を見たことがあるけど、普通はスピーカーから音が流れるらしいのだが、うちの学校は屋上にある鐘が直接音を奏でる。
 そんな音色の良い鐘の音を聞いて、クラス外の生徒は自分のクラスに、クラス内の生徒は自分の席へと帰っていく。生徒数名は、まだ残って質問をしているが時期に――。
「六時限目の授業を始めるぞ!」
 時期に来るとは思っていたが、鐘の音と同時に入ってくるなんてさすが担任の先生であり、生徒指導の先生でもある西野先生だ。
「そこ、早く席に戻れ!」
 注意を受けた生徒数名は席に戻って行く。
 六限目の授業は学活だ。とは言っても、見せかけだけであって、西野先生の大好きな動物の話に入るのだ。本当に、変な趣味には付き合わせないで欲しい、と心からの大きなため息を吐く珠澪だった……。

  ◇ ◆ ◇ ◆

 掃除が終わり、数名は帰り始めていた。
 しかしその数名に、
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