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祈りは通じる
第四章

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「軍隊ばかり大きくて人権も言論もない」
「そう聞いていたけれど」
「しかも階級まであるんだ」
 その国のイデオロギーでは否定されている筈のそれまであるというのだ。
「食べるものもなくてテロばかりしている」
「悪の組織みたいな国ね」
「そんな国だぞ」
 まさにというのだ。
「どんな悪いことでもする国だ」
「じゃあ拉致も」
「ああ、証言も出ているだろ」
 捕まったテロ実行犯からだ。
「攫われた人から日本語を教えてもらったって」
「それじゃあやっぱり」
「近高さんの娘さんもな」
 二人が何とか見付けて助け出そうと思っているその人もというのだ。
「まず確実にな」
「あの国に攫われたのね」
「間違いない」
 この恐ろしい予想はというのだ。
「あの国の仕業だ」
「それじゃあ何とか」
「あの国から取り戻そう、しかしな」
「それは難しいわね」
「何とかわし等も動いているが」
 支援者全体でだ、そうしているのだ。
「しかしな」
「しかし?」
「それだけ足りるのか」
「?言っている意味がわからないけれど」
「いや、人が動いただけで足りるのか」
 それはとてもというのだ。
「わし等がな。政治家の人も動いてくれているが」
「まだ足りないっていうの」
「そうじゃないのか。だからな」
 正蔵が侑枝に言うことはというと。
「神様や仏様にお願いするか」
「そうしようっていうの」
「ああ、どうだ?神社やお寺に行ってな」
「神様や仏様に近高さんの娘さん達を取り戻す力を欲しいってお願いするのね」
「困った時の神頼みっていうけれどな」
 正蔵は真剣な顔で侑枝に話す。
「どうだ?」
「そうね、人の力で足りないって思うのなら」
「神様や仏様に頼むか、どうだ」
「そうね」 
 侑枝は考える顔でだ、夫に答えた。
「それならね」
「いいと思うな」
「正直。かなり大変なことよね」
「相手が相手だ」
 苦い顔でだ、正蔵はその現実にも言及した。
「あの国だからな」
「平気で嘘は言うしテロはするし」
「人を攫っただけでもふざけた話だな」
「しかも攫っていないとか言うから」
「そんな国から人を取り戻すんだからな」
「大変よね」
「ああ、だからな」 
 それでというのだ。
「もう人の力で足りないみたいだ、だから」
「神様、仏様にもお願いして」
「近高さんの娘さん達を取り戻してもらおう」
「絶対にね」
「あの人達は絶対に攫われている」
 一部の知識人やマスコミ、市民活動家や弁護士、そして野党の政治家が拉致は捏造と言っていることはだ。嘘だというのだ。
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