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掛かれに退き
第四章
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「そして籠城するとな」
「そう思っている敵を一気に攻めるのじゃ」
 まさにとだ、佐久間も言った。
「わかったな、ではな」
「皆我等に続け」
「野洲川を渡り向こうにいる敵を一気に攻め崩すぞ」
 二人は自ら先頭に立ち城の兵達を率いてだった、城を出て敵軍に向かった。その敵である六角軍は使者の話を聞いてまずはいぶかしんだ。
「城に水がふんだんにあるのか」
「そして籠城するのか」
「まさか。あの城にはないと思っていたが」
「水があるか」
「では城攻めか」
「渇き攻めにも明け渡すことも言えぬか」
「城での戦になるのか」
 六角の者達は誰もがこう思い戦のことを考えていた、だが。
 その六角の軍勢にだ、柴田と佐久間が率いる織田軍は。
 全軍で一気に川の対岸まで来た、その織田軍を見て六角の者達が誰もが肝を冷やした。
「何っ、攻めてきたではないか」
「籠城するのではないのか」
「ここで攻めてくるのか」
「我等をそうするというのか!?」
 六角の者達は織田軍のその動きに唖然となった、それでだった。
 織田軍に完全に飲まれてだ、完全に萎縮してしまっていた。柴田と佐久間はその彼等への攻めを兵達に告げた。
「よし、攻めよ!」
「勝って生きるのじゃ!」
 こう命じて実際に攻めてだった、六角の軍勢を散々に破り六角家の力をかなり奪った。六角家の家臣達の多くが織田家に降り織田家は多くの土地と人を得ることになった。
 信長は岐阜においてその話を聞いてだ、満足した声で言った。
「わしの思った通りになったな」
「権六殿と牛助殿ならですか」
「あの二人なら勝つと思っておった」
 柴田と佐久間、二人ならというのだ。
「権六と牛助は当家で最も戦上手じゃからな」
「掛かれ柴田に退き佐久間ですか」
「そうじゃ、権六は攻めで牛助は守りとなるがな」
 掛かれと退き、攻める時と退く時にそれぞれというのだ。
「共に戦上手だからじゃ」
「二人を近江に置いて」
「六角との戦いを任せた、そして勝った」
「その相手に相応しい人を向けることがですか」
「勝つ為の秘訣じゃ、権六と牛助の功は大きい」 
 だからというのだった。
「褒美は多く出そう」
「では」
「うむ、多くをな」
 こう話してだ、そしてだった。
 信長は岐阜に戻った二人に多くの褒美を与えた、そのうえでまた言った。
「次はいよいよ浅井、そして朝倉とな」
「戦ですな」
「あの家との」
「無論権六と牛助も連れて行く」
 その柴田と佐久間もというのだ。
「あの二人の武も使いな」
「両家をですか」
「今度こそ確かな勝ちを収める」
 このことも誓ってだった、信長は柴田と佐久間も連れて姉川に向かうのだった。二人はこの戦でも功を挙げた。織田家きっての戦上手、信長が見込んだ者達
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