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何かわからないうちに
第五章
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「僕もそういうのは苦手だし沙織ちゃんもね」
「沙織ちゃん真面目だからな」
「優しくて面倒見がいい娘だけれどな」
「本当に真面目だよな」
「巫女さんだけあるよな」
「無茶苦茶真面目だな」
「御前よりも真面目だからな」
 大輝よりもというのだ。
「あんな真面目な娘いないぜ」
「そうそうな」
「あんな娘だとか」
「そういう話もないか」
「それよりもか」
「うん、沙織ちゃんと一緒にね」
 それこそというのだ。
「あの大社を預かることをね」
「考えてか」
「毎日修行中か」
「そう言うとお坊さんみたいだな」
「まあ同じものか?」
「違うけれどそんな感じだね」
 仏教の話が出てもだ、大輝はこう答えた。
「お寺も大変だから」
「何処もか」
「跡継ぎさんは大変なんだな」
「何かと」
「うん、そもそもね」
 ここで大輝が言うことはというと。
「跡継ぎさんの確保すらね」
「おい、暗い話だな」
「それお店でも同じだけれどな」
「中小企業でも同じだぜ」
「跡を継いでくれる人がいないとな」
「店も会社も畳むしかないからな」
「神社やお寺も同じなんだな」
 友人達はこのことも知ることになった。
「跡継ぎさんをまずキープする」
「そこからなんだな」
「それで修行してもらって」
「継いでもらわないと駄目なんだな」
「僕もね、子供の頃何のことかわからなかったよ」
 許嫁や跡を継ぐ、こうしてことがだ。
「けれど最近わかってきたよ」
「シビアな話なんだな」
「キスとかそんなの吹っ飛ぶ位の」
「跡継ぎさんの確保」
「何処も同じ事情か」
「大変なんだな」
「そうだよ、最近お店とか中小企業とかの閉店とか倒産も」
 業績の悪化以上にというのだ、その理由は。
「その理由で一番多いのはね」
「跡継ぎさんがいない」
「お店や会社を継いでくれる人がいない」
「そういうことなんだな」
「怖い話だな」
「そうなんだ、ましてご本家は娘さんしかいないから」
 この現実もだ、大輝は話した。
「跡継ぎさんが必要だったんだ」
「それで御前に白羽の矢が立ったんだな」
「分家筋の長男だった御前に」
「聞けば聞く程シビアな話だな」
「ロマンとか全然ないな」
「そうだね、まあそれでもね」
 全てを受け入れている顔でだ、大輝は言うのだった。
「こうしたものだってね」
「思ってるんだな、御前自身は」
「それでいいって思ってるんだな」
「受け入れているんだな」
「そうだよ、物心ついた時にはだったから」
 もう決まっているからだというのだ。
「修行してるよ」
「そうか、じゃあな」
「沙織ちゃんと一緒に頑張れよ」
「それでいい神主さんになれよ」
「何かあったらお参りに行くからな」
「頼むよ」
 
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