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何かわからないうちに
第二章

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 大輝は小学三年になった時にだ、彼のクラスメイト達に言われた。
「御前許嫁いるんだって?」
「うん、何かよくわからないけれど」
 この時も許嫁につていてよく知らないのでだ、こう返したのだった。
「沙織ちゃんとね」
「三組のあの娘とだよな」
「そうよね」
「そうだよ」
 こうクラスメイト達に答えたのだった。
「それがどうかしたのかな」
「じゃあ御前大人になったらな」
「沙織ちゃんと結婚するのよ」
「それで御前がお父さんになってな」
「沙織ちゃんがお母さんになるのよ」
「あれっ、僕沙織ちゃんと結婚するんだ」
 ここでだ、やっと大輝は気付いたのだった。
「そうなんだ」
「お母さんから聞いたぜ、御前と沙織ちゃん許嫁だってな」
「大人になったら結婚するんだって」
「もうそれが決まっててな」
「あんたと沙織ちゃんが夫婦になるのよ」
「ううん、そんなことはじめて聞いたよ」
 大輝はきょとんとして言った。
「僕達ってそうだったんだ」
「沙織ちゃんと仲良くな」
「もう彼氏彼女じゃない」
「喧嘩とかするなよ」
「離婚は注意よ」
「離婚とかって」
 そう言われても大輝には実感がなかった、それで。
 沙織に許嫁のことを言うとだ、沙織もこう彼に言った。
「私も言われたの、クラスの皆に」
「許嫁のことを?」
「ええ、大人になったら結婚してね」
 そしてというのだ。
「一緒に住むことになるって」
「沙織ちゃんも言われたんだ」
「私達そうなるのね」
「大人になったら」
「それで大輝君はね」
 沙織は大輝本人にも言った。
「私と結婚して私のお家で住むのよ」
「僕のお家じゃなくて」
「そうみたい、私が大輝君のお家に住むんじゃなくて」
「僕がなんだ」
「私のお家に住むの」
 そうなるというのだ。
「そうなるみたいよ」
「そうなんだ」
「何でも私のお家のお父さんになるから」
「僕がお父さんに」
「そうなるらしいのよ」
「何かわからないね」
 まだ小学生、それも三年生の彼にはだった。そう言われてもとてもだった。
 そしてだ、沙織もだった。
 わからないという顔でだ、こう大輝に言った。
「私が大輝君の奥さんになって」
「大人になったらね」
「そう言われてもね」
「実感湧かないよね」
「どうしてもね」
 それがというのだ。
「どういうことなのか」
「私達が結婚するって言ってても」
「どうしてもね」
「何なのか」
「本当にね」
 二人共許嫁同士と言われてもそれがどういったものかだ、結婚がどういうものかわからなかった。だが。
 中学校に入った頃にはだ、色々と知識が備わった。そして周りも。
 それでだ、大輝に周りが笑ってこんなことを言うのだった。
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