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炎の中の笑み
第十一章
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「狂ってそうして」
「人のものでなくなった」
「そうした奴の笑顔でしたね」
「まさに」
「風俗嬢といってもです」
 シスターが忌み嫌い惨殺していた彼女達のこともだ、高篠は話した。
「様々で」
「確かに金とか気持ちよさ求めてって人もいますがね」
「そうした女性がいることも確かです」
 二人も風俗嬢のことについては知っていてだ、それで言うのだった。
「そうした話もありますよ」
「それは事実です」
「ですがそれでも」
「彼女の主張はです」
「偏見の塊っていうか」
「異常なものでした」
 風俗嬢といっても様々な事情でなりそしてその仕事に就いているということをだ、理解していなかったというのだ。
「そもそも風俗嬢の何処が悪いのか」
「それもまた偏見です」
「そしてその偏見で」
「ああなってしまったのです」
「ああしたサイコ殺人鬼ははじめてです」
 話には聞いていたが、というのだ。
「私が取り扱った事件の中では」
「そうですね、しかし」
「人はああもなります」
 サイコ殺人鬼にだ、なってしまうというのだ。
「ああした場合もです」
「ありますので」
「ですからまあ」
「仕方ないといえばです」
 それは、というのだ。
「ああした奴も世の中には出る」
「狂気というものもありますので」
「そういうものですね」
「とにかく、これで」
「これ以上の犠牲者は出ません」
 二人は高篠にこのことも話した。
「沢山の人が殺されましたが」
「この事件はこれで終わりです」
「そうなのですね」
 高篠は二人の言葉に頷くしかなかった、それでだった。
 彼はあらためて燃え盛る礼拝堂を見た、礼拝堂は今も紅蓮の炎に包まれている。そしてその中にあった恐ろしい笑顔も。
 そのうえでだ、二人はだった。
 それぞれの術で水を出し礼拝堂の炎を消し去った。黒炭になり果てた礼拝堂のその中にはシスターの骸があった、だが。
 燃え盛っていた筈なのに身体は焼けておらずだ、炎は消え法衣は残っていた。
 その異様な骸を見てだ、高篠は言った。
「熱で死んだのですね」
「人でなくなった者は時としてです」
 役がその奇怪な骸についてだ、高篠に話した。
「焼けないものです」
「火にはですか」
「はい、そうした魔物もいます」
「彼女は既に魔物になっていたのですね」
「生物学的には人であろうとも」
 それでもというのだ。
「心が魔物になれば魔物になりますので」
「だからですか」
「このシスターもです」
 完全に魔物になってしまっていたからだというのだ。
「こうしてです」
「焼け残っているのですね」
「身体は」
 見れば笑顔もそのままだった、おぞましい笑顔のままで死んでいた。その笑顔は最早人のものではなかった、今も尚。
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