第四章
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「これはたまらん、わしにも食わせてくれ」
「はい、これでわかりましたね」
一休さんは皆ににこりと笑って言うのでした。
「どのご本尊が本物か」
「何と、飲み食いをしておると」
「どれだけ上手く化けていましても」
それでもというのです。
「食べもの、飲みものの誘惑には勝てません」
「いや、実はな」
もうすっかり狐の姿に戻っています、狐さんは九本の尻尾まで見せながらそのうえで一休さん達にお話します。
「化けてから何も食べておらん」
「そうなのですか」
「そうじゃ、お供えを食べるとな」
「それでばれるので」
「口元に付いたらアウトじゃ、必死で我慢しておったのじゃ」
お供えを見てもというのです。
「しかし目の前で美味そうに飲み食いされては」
「我慢出来ませんね」
「それには敵わん」
目の前で飲み食いされてはというのです。
「こんな辛い責めは他にはないわ」
「そうですね、こうすればです」
一休さんはぼた餅をどんどん食べる狐さんに応えて言います。
「化けていると出ると思っていました」
「何と、そうするとはのう」
将軍様も驚いて言うのでした。
「そなた、見事じゃ」
「そう言って頂けますか」
「余の負けじゃ」
将軍様は遂に完全にこのことを認めました。
「完全にな」
「そうなのですか」
「うむ、そなたの知恵にやられた」
まさにというのです。
「これはこれからもな」
「これからもといいますと」
「御主の頓智を見てみたくなった」
具体的にはというのです。
「時折呼んでよいか」
「私でよければ」
「またそなたに色々仕掛けるがな」
それでもというのです。
「それでもよいな」
「はい、ではその都度」
「うむ、余は悪戯をするぞ」
「私はその将軍様の悪戯に応えます」
こう言ってでした、そしてでした。
将軍様はこの日から時々一休さんをお呼びして勝負を挑みました、ですがいつも一休さんの頓智にしてやれて。
御所において地団駄を踏む顔になりました、ですが。
いつも楽しそうでいました、それこうも言うのでした。
「次はどうしてやろうか」
「上様、そう言っていつもではないですか」
「いつもではないぞ」
そのお顔で親当さんに言うのでした。
「次は違う」
「一休さんに勝つというのですね」
「そうじゃ」
まさにというのです。
「次こそは勝つ」
「全く、いつもそう言われますが」
「何を言うか、次はとっておきの悪戯じゃぞ」
まさに将軍様がこれ以上はないまでに考えた、です。
「政と学問と鍛錬の間に考えたな」
「左様ですか」
「今度こそ一休を出し抜いてやるだ」
こう実に楽しそうに言うのでした。
「楽しみで仕方ないわ」
「ううむ、少なくとも」
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