第二章
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三人の中で一番大柄で逞しい身体つきのエリックはこうブロッサムに問うた。
「それで出撃は俺達だけですね」
「そうだ、夜で雨だぞ」
「そんな状況で出撃出来て暴れられるのは」
「この基地でも俺達だけだろ」
ブロッサムはエリックに笑って返した。
「特に操縦出来るのはな」
「はい、中尉だけです」
「俺は昔から夜更かしが得意だからな」
「夜、雨が降っていようが」
「何ということはないんだよ、じゃあいいな」
「晴れるまでは」
「暴れ回るぞ、ただ雨だ」
天候のことをだ、ブロッサムはエリックとクローリーに強調して言った。
「向こうもまず出て来ない」
「ドイツの夜間戦闘機は、ですね」
「出ないですね」
「まずな、だから狙うのは戦車だの装甲車だ」
ドイツ軍のそれだというのだ、こうエリックに答えてみせた。
「あと晴れた時に邪魔だから高射砲なり対空自走砲もだ」
「狙う」
「そういうことですね」
「そういうことだ、じゃあ行くぞ」
「はい、俺達は梟ですから」
「梟として暴れてやりましょう」
エリックだけでなくクローリーも笑って応えた、そしてだった。
ブロッサムは二人と共に愛機に乗り込んで出撃した、司令が言った通り基地から出撃したのは彼の機体だけだった。
夜の雨の中を飛びながらだ、エリックは操縦するブロッサムに言った。
「中尉、他の基地からもです」
「出てる奴はいないな」
「はい、本当にです」
「俺達だけだな」
「一匹狼ですね」
「おいおい、俺達は狼じゃないだろ」
エリックの今の言葉にだ、ブロッサムは笑ってこう返した。
「蜘蛛だろ」
「そうでしたね、ブラックウィドーですから」
「そうだ、俺達は狼じゃない」
「蜘蛛ですね」
「このPー61の名前はそうだからな」
ブラックウィドーという、即ちクロゴケグモだ。アメリカにいる小型だが猛毒を持つ毒蜘蛛だ。Pー61は夜間戦闘機であり黒く塗装しているのでこの名前になあったのだ。
「俺達は蜘蛛だ」
「じゃあ蜘蛛としてですね」
「俺達は戦うんだ」
「一匹蜘蛛ってやつですね」
クローリーが笑って返した。
「つまりは」
「そうだな、今の俺達は一匹蜘蛛だ」
「そう言うとあまり格好よくないですね」
「蜘蛛だからな」
ブロッサムはこのことをとりわけ強く言った、夜の闇の中をレーダーを頼りにして前に前にひたすら進みつつ。
「どうしてもな」
「そうですよね」
「しかしな」
「それでもですね」
「暴れるぞ」
そのたった一匹の蜘蛛として、というのだ。
「いいな」
「はい、じゃあ下のドイツ軍を弾の続く限り倒して」
「その分ボーナスを貰いますか」
「リミットになったらバーボンだ」
それを飲むというのだ。
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