第六章
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ルーマニアからだ、彼等の王が来た時にだ。こう王に言われた。
「そなた達は変わったな」
「変わったと仰いますか」
「うむ、随分とな」
ルーマニアの吸血鬼そのままに厚い生地の黒のタキシードとマントに身を包み髪も丁寧に整えている王が言うのだった。
「別人の様だ」
「そこまでですか」
「かなりな、まるで」
「まるでとは」
「こちらの人間の様だ」
見ればモスコヴィッチは正装だがこちらの貴族のそれになっている。その彼に対してだ。王は言ったのである。
「そう思える」
「左様ですか」
「完全にスペインに入ったな」
「では今の我々は」
「こちらの吸血鬼になった」
これが王の見立てだった。
「吸血鬼もそれぞれだな」
「そうなのですか」
「うむ、それもまただ」
それこそとも言う王だった。
「面白いことだ」
「そうなのですか」
「かなりな」
こうしたことを話してだ、そのうえで。
王は二人とスペイン妖怪達の歓迎を受けた、それが終わってから。
まただ、モスコヴィッチとハスキルに言ったのだった。
「吸血鬼はスペインにいてもいいな」
「スペインの風土に合った風で」
「それでもいいな」
「では私はこのまま」
「暫くスペインにいてもらう」
「それでは」
王に恭しく応えたのだった、その顔は微笑んでいた。それは彼の傍に控えているハスキルも同じだった。
そうしてだ、モスコヴィッチは王が帰った後であらためてだ。ハスキルとスペイン妖怪達にこう言ったのだった。
「ではこれから」
「はい、我等のですね」
「宴を楽しもう」
「牛乳で割った血に」
それにだった。
「大蒜を抜いたトマトをふんだんに使った料理も」
「そしてワインだな」
「用意していますので」
「では人間達が起きているこの夜はな」
「我等だけで楽しみましょう」
「妖怪達でな」
こう話してだ、二人の吸血鬼はスペイン妖怪達と共に宴を楽しんだ。スペインの心から楽しめるその宴を。
ラテン=ヴァンパイア 完
2015・2・17
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