1部分:第一章
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かずに言葉を続ける。言葉と共に笑みがさらに妖しくなってきていた。
「そういうことね」
「ええ。それじゃあいいわよ」
遂に今はいと言った。これで決まりであった。
「貴女で」
「女だけれどいいのね」
「それは貴女の言葉ね」
美女もまた沙耶香に言葉を返す。笑ったまま言葉をかけていく。
「女同士には女同士の悦びがある。そうね」
「そうよ。それじゃあ」
「ええ」
沙耶香と美女は頷き合う。そうして同時に立ち上がり奥の部屋に向かう。ここで沙耶香は美女の名を問うたのであった。
「貴女の名前を聞いておきたいのだけれど」
「その方がベッドの中でいいものね」
「そうよ。睦言の中でお互いの名前を呼び合うことこそ」
そこにはいささか倒錯した悦びと快楽があった。彼女はそうしてそれもまた楽しむのであった。
「いいものなのだから」
「そうね。それじゃあ私の名前は」
「何かしら」
「紫麗よ」
「紫麗ね」
「ええ、言っておくけれどこれは本当の名前よ」
それもまた沙耶香に言うのであった。こうした店の中では普通名前というものは所謂源氏名である。しかし彼女はあえて本当の名前を沙耶香に告げたのである。
「本当のね」
「あら、それをあえて私に教えてくれたのね」
「わかるわよね、このことが」
妖しい笑みをさらに妖しくさせて沙耶香に問う。
「このことが」
「勿論。じゃあ楽しみましょう」
「ただ楽しむだけではなくて」
紫麗は沙耶香にまた告げた。
「私を何処まで燃え上がらせるかよ。期待しているわよ」
「私は期待を裏切ったことはないわ」
沙耶香は紫麗の言葉に自信に満ちた笑みと声で言葉を返した。
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