1部分:第一章
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もこう答えを返したのである。
「私はそうは思わないけれど」
「日本人は結構そういうところに鈍感ね」6
「それはそうかも知れないわね」
何となくわかることではあった。沙耶香も日本人だが自分の名前が日本人らしいかどうかは考えたことも意識したこともなかった。それは事実である。
「けれど。自覚しているものはあるわ」
「何かしら、それは」
「自分の美しさよ」
その言葉と共に妖しげに笑ってみせる。そのうえでの言葉であった。
「それは自覚しているわよ」
「そういうところは日本人らしくないわね」
「よく言われるわ」
やはり笑って述べる。日本人というものは謙遜を美徳とすると言われている。そういう点においては沙耶香はあまりそうではなかった。
「気にはしていないけれどね」
「そういうところも日本人らしくないわね」
「かもね。ところで」
「ええ」
ここで話題を変える。今度は沙耶香が彼女に問う番であった。
「貴女の名前は?」
「私の名前?」
「そうよ。聞きたいのだけれど」
「それは何故かしら」
美女もまた妖しく笑う。そうして沙耶香の答えを待っていた。二人はその言葉のやり取りを楽しんでいる。それはさながらお互いを愛撫し合うかのようであった。
「一夜を共にする相手の名前を聞いて悪いのかしら」
「あら、私を選んだのかしら」
「そうね。今夜は」
また彼女に告げる。
「貴女がいいわ」
「女同士なのにいいのかしら」
「男は男で」
それに応えて述べる沙耶香であった。
「女は女で快楽があるわ。今夜はそれを味わいたいのよ」
「そうなの。それで私なのね」
「駄目ならいいわ」
あえて突き放してきた。
「私は無理強いはしないわ。少なくとも今はね」
「私に対してはという意味ね」
「そうよ。あくまで私は待つだけ」
また言ってみせてきた。あえて動かずに。
「貴女をね。貴女がはいと言えばそれでよし」
「嫌だと言えば?」
「それなら仕方ないわ」
グラスの中のワインを飲み干す。紅いワインが口の右端から流れる。さながら血を飲み干しそれが流れるようである。美女はそれを見てそっと顔を近付けさせた。そうしてワインを舐め取るのであった。それだけでかなり妖しい美が生まれていた。
「これはよしということかしら」
「だったらどうなのかしら」
沙耶香の口元から流れるワインを舐め取った美女は彼女に問う。妖しい笑みを瞳の中にも含ませて沙耶香に対して問うてきたのだ。
「決まっているわ。それじゃあ」
「けれど。ここでは駄目よ」
沙耶香がその身体を抱こうとすると言ってきた。上にある彼女の顔を見たままで。
「ここではね」
「わかっているわ。ここはあくまでお酒だけを楽しむ場所」
「ええ」
「そして他の場所では」
彼女を抱
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