第四章
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「ばったりってあるって言ったけれど」
「それでもな」
「こうしていきなり出て来るのはな」
「しかもメイドさんになって」
「世の中何があるかわからないな」
「奇跡みたいなものだな」
「ある意味奇跡だよ」
夏樹は今も驚いている顔で言うのだった。
「いいか悪いかは別にしてもな」
「そうだよな」
「本当にな」
「まさかこんなところで会うなんて」
やはり一番驚いているのは夏樹本人だ、その感情をそのまま顔に出してそのうえで友人達に対して語った。
「想像していなかったよ」
「そうだよな、まあとにかくな」
「もうちょっとしたら注文来るし」
「それはそれでな」
「楽しもうな」
「そうだね、メイドさんはあの娘だけじゃないし」
気を取り直してだ、夏樹は店の雰囲気とメイドの娘達とのやり取りを楽しむことにした。幸い彩奈はテーブルには来なかった。ただ帰りにはやはりいて。
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
にこりと頭を下げて来た、その応対を受けて。
夏樹は店を出た後腕を組んで考える顔で歩きつつだ、友人達に言った。
「想像もしていなかったよ」
「けれどお店自体はよかっただろ」
「うん、いいお店だね」
夏樹もこのことは認めた。
「とてもね」
「そうだろ、内装はよくてサービスもよくてな」
「コーヒーもケーキも美味しかったよ」
「合格だろ」
「可愛い娘も多かったし制服も可愛かったし」
夏樹は客観的にだ、店を褒めはした。
しかし彩奈のことを考えてだ、どうしてもこう言うのだった。
「それでもね」
「もう行かないか?」
「あの娘がいるなら。ただ」
「ただ?今度は何だよ」
「いや、顔はあの時のままなのに」
自分を虐めていた小さな時だ、笑顔もそのままだった。
だがそれでもだった、小学校卒業の時から久し振りに会った彩奈はだ。どうだったかというと。
「何か全然違ったよ」
「可愛かったか?」
「いや、メイドなんてね」
やはり思い言うのはこのことだった。
「想像していなかったから」
「だからか」
「それでか」
「驚いて。それに尽きるよ」
とにかく今はそれに尽きた、まさかそのメイド喫茶で本人としかもご主人様とメイドという立場で会うとは思わなかったからだ。
だが、だ。三日後。
少し落ち着いた彼はどうしても気になって店に来た、するとやはり入口では彩奈がいて迎えてくれた。その彼女に。
夏樹は直接だ、こう言った。
「一ついいかな」
「ご主人様、何でしょうか」
「アンジュリーナだったね」
「はい」
彩奈は笑って夏樹に答えた。
「そうです」
「じゃあアンジェリーナ」
夏樹はその彩奈に合わせて彼女の名を呼んだ。
そうしてだ、こう言ったのだった。
「お願い出来るかな」
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