第一章
[2]次話
ミステリアスなピアニスト
田中圭一は芸術大学で音楽を専攻している、彼が行っているのはピアノだ。
幼い頃からピアノを弾いていて数々のコンクールで優勝している、その彼を見て大学の者達もピアノの関係者達も言う。
「あれこそな」
「ああ、神童だな」
「まさにピアノの神童」
「ショパンの生まれ変わりかもね」
こう言うのだった。
「日本にショパンが出た」
「彼の生まれ変わりが」
「実際にショパンが得意で」
「他の音楽も」
他の作曲家の曲もというのだ。
「演奏出来るし」
「本当に天才だよ」
「麒麟児って言うのね」
「ああした子こそ」
「まさに麒麟児」
「どんな曲も完璧に弾ける」
「そうした子だから」
誰もがこう言って圭一を褒め称えた、彼は誰もが認めるピアノの天才だった。
だがそれでもだ、本人はというと。
切れ長の目にl黒縁眼鏡をかけていて涼しい口元と高い鼻。面長で黒髪はいつも奇麗に櫛を通している。
背は一七五位で痩せている、容姿もわりかしよかった。
だが、だ。その日常生活はというと。
「何かなあ」
「あまり話さない?」
「口数が少ない」
「あまり言わない」
「そうよね」
「私生活についても謎で」
学園生活は真面目だ、何も悪いところはない。
だがそのプライベートはだ、誰も知らなかった。
「普段何をしているんだ?」
「ピアノの練習ばかり?」
「趣味は?」
「好きな食べものは?」
そうしたことがだったのだ。
「何かな」
「全部等で」
「謎の多い人だよ」
「全くだよ」
「本当にな」
「不思議な人だ」
それこそと話すのだった、天才ピアニストの私生活は誰も知らなかった。それで彼は非常にミステリアスな存在とみなされていた。
しかしだ、圭一はというと。
自分から語らない、非常に無口だ。人付き合いも少なくだ。
ただピアノを弾くだけだった、それで。
誰もがだ、余計に彼についてあれこれと話すのだった。
「交際相手いないのか?」
「いるでしょ、彼女は」
恋愛についての話もするのだった。
「顔もスタイルいいし」
「しかも天才ピアニストだから」
「もてるだろうし」
「それじゃあか」
「彼女はいるのかな」
「いるでしょ」
「ひょっとしたら結婚してるかも」
こうした説も出て来た。
「実家から大学に通ってるけれど」
「ああ、大学から実家近いから」
「それで通ってるのね」
「実家から」
このことも話された、彼は実家で両親と一緒に住んでいる。しかしその実家での生活も謎に包まれているのだ。
それでだ、彼等はまた言うのだった。
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