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Absolute Survival!! あぶさばっ!!
第二話 平和な平凡の終わり
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か、あるいはガソリンスタンドで起こったのだろう。遠くに見える一部だけが、この広い街の中で一際激しく燃え上がっていた。
こんなに大火災が起きているのに、消防車のサイレンが聞こえない。
こんなに人が襲われて死んでいるのに、警察の一つも駆けつけてこない。
何が起こっている?
今日、学校から帰ってくるまでは平和そのものだったこの街に、数時間で何が起こった?
人が人を襲って、あまつさえその肉を食べている。
まさに狂気の極み。秩序も何もない世界。
ああ、だけどこんな光景は、前にも見たことがある。
自分はこの光景を知っている。ただ、そんなことが現実に起こるわけがないと、あり得るはずがないと。そんなのは画面の中の世界だけだと。
あまつさえ、そんな世界になったら面白いんだろうな、などと楽観視していた自分に、唾を吐きかけたくなるような、嫌悪感。
無性にこみ上げてくる吐き気を抑えながら琉が窓の外を見回すと、ちょうどここの窓の下で、一人女の子が泣いている姿を見つける。
歳は五、六歳と言ったところだろう。一人でここまで来たのか、格好はパジャマに裸足だ。片手にウサギのぬいぐるみを抱きかかえ、「怖い、怖い!」と叫んで泣いている。
その少女の声に反応したのか、わらわらと『奴ら』が集まってくる。このままいけば、数秒後には襲われてしまうだろう。
しかし、琉は動けない。
茫然と、事の成り行きを二階の窓から見守っているだけ。
少女が『奴ら』に掴みかかられる直前、少女は頭上の琉の存在に気が付いたようだった。
そして微かな希望にすがりつくように、その小さく細い腕を頭上の琉へと伸ばし、小さく「助けて―――!」と、言葉を紡ごうとした時にはすでにその姿は消えていた。
肉の裂かれる音や骨の折れる不気味な音がし、少女は跡形もなくなる。
リュウは今度こそ耐え切れなくなり、窓の外に向かって嘔吐してしまった。
全身は恐怖のあまりガタガタと痙攣し、目からはとめどなく涙が溢れてくる。
先程の少女は、こちらに助けを求めていた。一心に、死にたくない、と。
しかし、琉の身体は恐怖で動かなかった。情けないことに、ただ傍観する者でしかなかったのだ。
琉は口から零れ出る胃液を服の袖で拭くと、「動け……」と言葉を漏らす。
「動けッ!動いてくれッ!早く、ここから逃げないとッ!動け俺の脚ッ!」
恐怖に打ち震える脚に活を入れるようにして、何度も拳で殴りつける。
早くここから逃げないと、まずい。
何人かの『奴ら』が、家の玄関を破壊して入ってくるのが見えたのだ。
すぐにでも見つかってしまう。
そうなれば、確実に殺さ
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