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Absolute Survival!! あぶさばっ!!
第二話 平和な平凡の終わり
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り越し、その姿はもはや恐怖しか浮かばない。

「っあ、ひっ、」

 琉は叫び声を上げそうになるが、舌がうまく動かず、声にならない声だけが喉の奥から絞り出される。

 そして夏帆が「あァ」と呻き声のような音を発したかと思うと、僅かに開いていた扉を『ドガッ』と両腕で殴りつけた。

 その瞬間、琉は風景がぐるんと一回転して、その直後に想像を絶する痛みが全身を駆け抜け、同時に頭上で「ガシャァァ」と窓が威勢よく割れる音を聞く。

「?!……ッ!」

 いつの間にか琉は自室の出入り口から反対方向に位置する窓の下に尻餅をつき、苦痛に顔を歪めていた。木製の扉があったはずの出入り口には、無残にも壊れた金具だけがキィキィと音を立ててぶら下がり、先程同様に妹の夏帆がふらふらと揺れながら立っているだけだ。

「な、に……が……?」


 琉は茫然と今起こったことを理解しようとする。
まず、夏帆が扉を殴った瞬間、扉の金具が嫌な音を立てて壊れ、琉もろとも後方に吹っ飛んだ。

 次に琉と扉はゆうに五メートル以上も吹っ飛び、琉は窓の下の腰壁へとしたたかに背中を打ち付け、扉は窓ガラスごと下に落ちて行った。



―――――――意味が分からない。



 鈍痛が走る背中を押さえながら、最初に抱いた感想がそれだった。

 ただ殴っただけで、しかも妹みたいな非力な人間が扉を殴ったごときで、ここまで非現実的なことが出来るのか。

 否、出来ない。


「あ、はは……夢、か……。」

 夢。

 その一文字で片付けられれば、どれほど良かったか。

 恐怖でカタカタと鳴る歯をどうにか食い縛りながら、琉は床に手をついてなんとか立ち上がる。

 立った瞬間、生温かくドロッとしたものが鼻から出てきたことに気が付いた。

 扉で打ち付けたのか、それとも混乱のあまり脳がどうにかなってしまったのか、どくどくと鼻血が流れ出ている。

 琉は慌ててカッターシャツの袖で鼻血を拭い、背中の痛みに顔を顰めた。

 骨折や打撲はしていないようだが、少し身体を動かすだけで背中に痛みが走る。

 これが夢などとは、到底思えなかった。

 ならば、何か?よくテレビ番組で観るドッキリだとでもいうのか?

 しかし、先程は一歩間違えば窓から落ちていたかもしれない。運が悪ければ本当に死んでいたかも。そんなことをテレビでやるとは思えないし、妹の過ぎたイタズラとも思えない。

 琉が困惑して立ち尽くしていると、今までフラフラと立っていた夏帆が急に動いた。

「か、夏帆……冗談は止めてくれ……な?」

 一歩、また一歩と琉に近付いてくる夏帆に向けて、琉が裏返った声を出す。

 しかし夏帆は「アぁ、ンァあ」と奇妙な奇声を上
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