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Absolute Survival!! あぶさばっ!!
第一話 普通の高校生☆
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「ウィーッス、琉、颯。おはチィーッス」

「おはよう畑くん」

「おはチッス、畑」

 教室に入って早々、扉の近くでスマートフォンをつついている、『畑』と呼ばれた青年が琉と颯に軽い感じの挨拶をする。

 それに琉、颯、の順番であたりさわりもなく返し、二人が自分の席へ着こうとすると、教室の隅っこでこそこそと何やら話している男子三人組が「おっ」と声を上げ、琉に向けて片手を上げた。

 三人の内、眼鏡をかけている長身の青年は琉の側まで歩いてくると、眼鏡のフレームをクイッと持ち上げて言った。

「おはよう後藤くん。今日も眠そうな顔をしているね。寝不足かい?」

「ああ、おはよう三桑くん。いつも同じことを聞いてくるね」

「そうだったかな?」

 三桑と呼ばれた青年は別段気に留めた様子もなく、とぼけたように言う。

 これは琉と三桑の間で毎朝行われているやりとりで、今や当たり前となってきているものだ。

 最初こそ三桑は本当に心配している様子で聞いてきたのだが、それが琉の素の表情であると知ってからは挨拶の一環のような感じで付け足してくる。

 しかし別に琉も嫌というわけではないので毎朝繰り返していたら、いつの間にか定着していたのだ。
琉が苦笑いを浮かべて「ああ」とだけ言うと、満足したのか三桑は片手を上げて教室の隅っこへと戻っていった。

 隅っこで待っていた二人も琉に気が付いたのか、片手を上げて「おう」とにこやかに挨拶をしてくる。

 琉も片手を上げて「おはよう」とだけ返し、三桑と二人がまた話し始めたのを見て、学生鞄を机の横に掛ける。そして机の引出しからカバーのかけてある文庫本を取り出すと、黙々と読み始めた。

     



 それから朝のショートホームルームを終え、三時間の退屈な授業を眠らずになんとか乗り切り、やっと昼食休憩の時間になる。

 授業中特に変わったことは無かったが、強いて挙げるならば琉がうつらうつらと夢現を彷徨っているときに、先生がビクビクしながら「あのー、後藤くん……?私の授業聞いてくれると嬉しいなー、なぁんて…………」とか細い声で注意していたことくらいだろう。

 後から颯に聞いた話だが、琉は無意識のうちに教師をもの凄い眼で睨んでいたらしい。琉にとっては睡魔と必死に闘っていたつもりだったのだが、どうやら教師には授業が退屈で睨まれていると思ったらしい。教師に怖い思いをさせてしまったらしいと知った時には、琉もさすがに申し訳なく思った。

 琉が自分の学生鞄から弁当を取り出して中身を机の上に広げていると、颯が琉の机に椅子を寄せてきて、さも当たり前のように弁当を広げ始める。

 これも日課なのだ。中学生の時分から、ずっとお昼はこの二人で食べている。
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