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Absolute Survival!! あぶさばっ!!
第零話 夜道の短いプロローグ

[2]次話

「――――っ、はぁっ、はぁっ……」


 一人の少年が夜道を駆け抜ける。

 肩で大きく息をし、ときどき段差に躓きながらも、一心不乱に前だけを見て走っている。

 その姿はまさに必死そのもの。

 何かに脅えているかのように引き攣った表情からは、焦りと困惑の入り混じった複雑な感情が見て取れる。

 と、突然暗闇から何かが道を塞ぐように飛び出してきて、少年の行く手を阻もうとした。

「……っあ、邪魔だぁぁあ!」

 少年は手に持っていた木刀を大きく振り上げ、力の限り目の前に立ちはだかる『何か』に向けて、振り下ろす。

 少年の振り下ろした木刀は見事に命中したのか、「ゴズッ」と鈍い音がしたかと思うと、『何か』はその場に力無く崩れ落ちた。

 しかし少年は崩れ落ちた『何か』には見向きもせず、一呼吸おいてまた走り出す。


―――――未だに信じられない。ゲームや漫画の中だけならまだしも、まさか現実にこんなことが起こるなんて。


 少年から観える町には炎の手があちこちから上がり、夜空の暗雲をチラチラと照らしている。

 そして道端には死体、死体、死体、そして『何か』達。

 その『何か』達は、眼球が真っ黒に染まり、口をだらしなく開けて歯を剥きだしにし、傀儡師にでも操られているかのように不自然な歩き方をしている。

 そう―――それはまるで、古来から語り継がれ、様々なゲームや漫画でも登場し、その名を知らぬものは居ないと言う程の有名な呼称―――『ゾンビ』そっくりではないか。

 なぜこんな場所で、なぜこんな時に、と少年は走りながら答えの返ってこない問いを繰り返し続ける。

「っは、はぁっ、はぁっ…………くっ、」

走っている少年の頬を、一筋の涙が伝う。

それは今まで嗅いだことのなかった、血の臭いに耐えられなくなったのか、はたまた今の状況の理不尽さに憤っているのか。

それとも、別の何かがあるのか。



それは少年にしか分からない。








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