3部分:第三章
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「しかしあれだな」
知事は再び窓に目をやる。相変わらず紅い雪が降り注いでいる。
「気候を変えられるとなるとやはり相当の相手なのかもな」
「その可能性は否定できません」
沙耶香はそれに応えて言ってきた。
「ですが私もまた黒魔術師。仕事は果たしてみせましょう」
「そうか。では期待しているぞ」
「お任せ下さい」
沙耶香は述べる。声は低くそれでいて透き通っている。だがえも言われぬ艶もある声であった。
「それでは早速」
「捜査をはじめるのか」
「はい。実は幾つか心当たりもあります」
「この雪にかね?」
知事は沙耶香の言葉を聞いてその眉を少し動かしてきた。
「私もあることはあるがどういったものかね」
「知事も紅い雪は御存知ですか」
「といってもあれだ」
彼は答える。
「私が知っているのは普通の雪だ。ヨーロッパに降るものだな」
「あれですか」
沙耶香はそれを聞いて知事が何を指しているのかすぐにわかった。
実は欧州では紅い雪が実際に降る。だがそれは怪奇ではなく自然現象である。アフリカのサハラ砂漠の赤い砂が風に運ばれて北上しそこで雪に混ざってできるものである。だから特に恐ろしいものでもない。日本でも中国の黄砂が混ざった黄色い雪が降ることもある。それと同じだ。
「あれだけだ」
「ではこの雪は御存知ないですか」
「うむ、それはあくまで君の専門だな。だからこそ頼む」
「わかりました。では」
沙耶香は一礼した。そして顔を上げるとすぐに部屋を出ようとしてきた。
「早速」
「それでだね」
知事はまた彼女に声をかける。
「その相手がそれこそ東京都どころか日本すら潰しかねない相手だったらどうするのかね」
「私はその相手を完全に消してみせましょう」
沙耶香は落ち着いてそう述べた。
「それだけです」
「では速水君は呼ばなくていいのか」
「あの方と会うのはいつも縁があってのことですので」
彼女は今度はその整った顔に笑みを浮かべてきた。濃厚な退廃を纏った笑みであった。
「出会うならば出会うでしょう。それも偶然に」
「では私は動くことはないな」
「御言葉ですが」
「わかった。ではやってくれ給え」
ここは沙耶香に完全に任せることにした。彼も腹を括ったというわけだ。
「是非共な」
「お任せ下さい。それでは」
「うむ」
話は決まった。沙耶香は部屋を後にしこの紅の雪の謎にあたることになった。彼女が部屋を去った後ですぐにあの官僚が入れ替わりの形で部屋に入って来た。
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