24部分:第二十四章
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。肌を知らない間は」
「そして肌を知ればか」
「白い雪を降らせられるのです。そう」
彼女は言う。
「血を外で流すことにより。雪を白くするのです」
「紅を出して」
「おわかりでしょうか。これで」
「うん、ようやくな」
知事は納得したように頷いた。
「今回は御苦労だった。謝礼は振り込んでおくから」
「わかりました。ではこれで」
沙耶香は一礼した。それで去ろうとする。しかしここで知事がまた声をかけてきた。
「待ち給え」
「何か」
その言葉を受けて振り向く。見れば知事は悠然とした顔で笑っていた。
「今日はこれからどうするつもりかね」
「今日ですか」
「仕事は終わった。羽根を休めるかね」
「そうですね」
その言葉を聞いて目を細めさせてきた。黒いブラックルビーの目が妖しく光る。
「少し身体が冷えましたので」
「酒かね」
「それと」
ここで沙耶香は少し欲を張ることにした。
「また女の子を」
「今度は人間のだね」
「はい」
その言葉にこくりと頷く。
「また。頂きます」
「わかった。では楽しんできたまえ」
「はい。ではまた機会があれば」
「会うとしよう。ではそれまでは」
「はい。一時の別れを」
「ではまた」
「御機嫌よう」
沙耶香はそのまま黒い霧の様に都庁から姿を消した。ゆっくりと紅の雪を踏みしめながら何処かへと去っていく。雪はもう消えかけ水との狭間にあった。彼女はそこに昨夜の宴のことを想い浮かべながら先に進んだ。儚い一夜のことを。
黒魔術師松本沙耶香 紅雪篇 完
2007・1・25
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