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バリトン
第五章
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ンにはバリトンのよさがある」
「素晴らしさが」
「僕はその素晴らしさを心ゆくまで堪能出来ているんだよ」
 ゴンドールノは明るい笑顔のままで言うのだった、周囲に。
「これ以上はない幸せ者だよ」
「バリトンだからこそか」
「味わえているんだな」
 周囲もようやく彼がバリトンと言われて喜んだのかわかった、バリトンにはバリトンの素晴らしさがあることを知っているからだとだ。
 そして彼はだ、ロシアオペラにも進出してだった。
 そちらでも名唱で喝采を浴びた、オペラ史に名を残すバリトン歌手エーリオット=チェザーレ=ゴンドールノはその歌唱と演技、そのレパートリーの広さで知られているがその彼にはこうした舞台裏が存在していたのだ。


バリトン   完


                             2015・3・24
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