第五章
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「違うから」
「それじゃあ」
「ええ、家鴨と一緒の写真も撮ってね」
「そうさせてもらうよ」
「それでまだ回るのよね」
「うん、海賊船にも乗って」
今度は冒険島だった。
「他にもお池に行ったりアトラクション観て」
「それで最後は」
「花火観よう」
夜に、というのだ。
「そうしよう」
「この遊園地の花火をね」
夜空に咲くお花達をというのだ。
「観ようね」
「それが最後で」
「今日は終わりだよ」
家に、日常に帰るというのだ。
「それでまた明日から仕事だよ」
「そうなるわね」
「イルミネーションもあるし、ここの遊園地」
「そこでも撮ってくるのね」
私の写真を、と彼に尋ねた。
「そうよね」
「そのつもりだけれど」
「じゃあお願いするわ」
微笑んで彼に告げた。
「一枚でも何枚でもね」
「それじゃあそうさせてもらうよ」
彼はカメラを手に私の言葉に喜んでくれた。そうして夜も私達は遊園地で二人で楽しんだ。そして遊園地を出る時にだ。
私は彼にだ、こうも言った。
「これでね」
「うん、普段の生活に戻るね」
「ガラスの靴はもうね」
シンデレラのそれはだった。
「今脱いだわ」
「童話の、夢の世界はこれで終わったね」
「今はね、けれどね」
「またここに来ればね」
彼は後ろを振り向いた、その遊園地を。遊園地は今は花火も終わって夜の中にお城や他の遊ぶ場所を浮かび上がらせていた。
「お姫様や騎士になれるわね」
「童話の主人公にね」
「たまにはいいわ」
メルヘンなヒロインになるのも、とだ。彼にこうも言った。
「そうしたこともね」
「うん、それじゃあね」
「また今度ね」
「一緒に行こうね、ここに」
「二人でね」
彼の手を握ってだ、私も遊園地の方を見た。そのうえで今は日常に戻ってだ。またここに来ることを楽しみにして家に帰った。
メルヘン=ロケーション 完
2014・10・30
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