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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
倒れるときは前のめりでお願いします
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病弱ヒロインは主人公に××で××の××を裂かれて血が流れていたわけだが。

「それで、あたしもう式に戻っていいですか?」
「別にいいけど、そうねえ……今さら戻ったところで入学式終わるわよ」
「……はい?」

 壁に掛けられている時計を見ながら養護教諭のおねーさん先生が返した言葉に、珠希も思わず同じ時計に目をやるが、何度見ても時計の針は事前に聞かされていた入学式の終了予定時刻に迫ろうとしていた。

「……マジで?」

 まさか自分不在のまま入学式をスルーする羽目になるところまでは予想できていなかった珠希は思わず本音を口から漏らす。
 だが対照的に、言動の端々からどこか不真面目そうな臭いがする養護教諭は、これが大人の諦め方だとばかりに入学式から早々に悪目立ちしてしまった『これからの未来を背負って立つ』らしい新入生少女をあしらうように軽く言ってのけた。

「ほんっと、人助けって割に合わないわよねぇ」

 そうですね……って、それは養護教諭(あなた)の吐いていい台詞じゃなくね?
 今までの会話の流れで思わず賛同の相槌を打とうとした珠希は一転して心の中でツッコミを入れる。あくまで心の中で。


「入学式早々大変な目に遭っちゃったけど、まぁ適当に頑張りなさい」
「は、はぁ……」

 珠希の心中でのツッコミなどつゆ知らず。椅子の背もたれに寄りかかり、白衣の胸ポケットに挿していたペンを暇そうに回し始めたおねーさん先生はそう言うものの、適当とか肩の力を抜くとかが苦手なこの長女はそう言われたところでその方法を知らないからどうしようもない。

「そんじゃもうアナタは教室戻っちゃいなさい。このコはアタシが面倒見といたげるから」
「いや、なんですかその子供預かった近所のお母さん的な発言?」
「面白い喩え方すんのねアナタ。えっと……竜門さん、だっけ」
「一度聞いたら忘れない苗字なんじゃないんですか?」
「ん〜、そうだっけ?」

 厄介者を追い出すかのように手の甲を振る養護教諭の発言に納得できない珠希はその点に追及を始めるが、この養護教諭が返したのは先の自分の発言内容すら全否定する反応だった。

「とりあえず、いい加減に教室戻りなさい」

 マジかよこの養護教諭(B○A)。誤魔化して押し切るつもりとか。

 喉仏のあたりまで吐き出しかけた禁断のフレーズをぐっと飲み込み、年齢不詳――おそらく20代後半から30代前半――のおねーさん先生の指示に素直に従い、保健室を後にした。


 そうして教室に戻った先から、珠希は入学式の最中に「抱擁としか見られなかった介抱」をやってのけた人物として視線の集中砲火を浴びる羽目になってしまったわけだが。




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